漫画「半助喰物帖」―タイムスリップした侍がOLの台所番となったら…?

慶応二年に生きる侍が現代にタイムスリップ、東京に暮らすOLの下で台所番を務めることになる、という一風変わったグルメ・料理漫画「半助喰物帖」あらすじ紹介&感想です。

タイトルの読み方は「はんすけとりものちょう」じゃなくって「はんすけくいものちょう」。原作は草香去来(くさかきょらい)さんで、漫画は灯まりも(ともりまりも)さん。2021年10月刊行の6巻で完結となりました。

「半助喰物帖」感想・レビュー

あらすじ

慶応二年、安芸国にて第二次長州征討に従軍する大和越部藩士・楢原半助(ならはらはんすけ)。食べ物を探すうちに井戸に転落し、なぜか現代の東京にタイムスリップ。取り急ぎ居酒屋にて腹を満たすも支払いでトラブルに。

そこに居合わせた会社員・香澄は、性分から半助の食事代金を肩代わり。その身の上に半信半疑ながらも、成り行きから「料理が得意」という半助に食事を作ってもらう。有り合わせの材料でできた「にゅうめん」。それを食べた香澄は、その味の優しさ・温かさに思わず涙が…

その後多少のすったもんだもありながら、香澄の家に居候、「台所番」として彼女に仕えることになった半助。今日も主人のために、現代料理の鍛錬に余念が無い…。

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過去から来た「台所番」

一人暮らしの女性会社員と、幕末の侍。「半助喰物帖」ではそんな二人の奇妙な同居が綴られていきます。

男女の同居、と言うとちょっと色気のあるものを想像してしまうかもしれません。しかし半助は既婚者であり、また彼にとって香澄は恩人、かつ「仕える主人」という存在。そのため話の内容はビックリするほど健全(笑)。掃除・洗濯(下着以外)・炊事など、家事全般を仰せつかった半助が台所番として奮闘する様子が、物語のメインです。

なお「侍」である半助は帯刀もしていますが、比較的穏やかな時代の穏やかな人物(えばってる侍ではない)。また仕えていた藩では主に料理を担当し、食にも造詣が深い男

3話以降、ちょんまげにTシャツ+ハーフパンツというラフな姿になった彼。牛丼屋などで食事をしたり、レシピ本を読んだりして、もともとの料理スキルに現代の食の知識をプラス、本格的に香澄の「家政夫」となっていきます

和食の魅力が満開

台所番を任された半助。主人である香澄が食べやすいもの(かつ、予算の範囲におさまるもの)を、と献立に気遣いを見せます。

そのメニューは「なすとほうれん草のにゅうめん」「大根の葉の菜飯」「鶏もも肉の雉飯もどき」など和食中心(150年前の人間なので当たり前なんですが)。これが仕事帰りにこんなご飯が待っていたら嬉しいなぁ、と思うものばかりで、実に食欲をそそる。和食の魅力が炸裂しています。

しかし和食ばかりでは香澄に申し訳ないと、「異国の料理」にもチャレンジするのが出来る台所番。「かるぼなあら」なんかも作ったりして、ちょっとずつ21世紀の食事や調理道具に慣れていく侍、という図式が面白い。

っていうか、半助がすっごいマジメに料理に取り組む姿、ついつい見ちゃいます。なお作った料理は、半助の手により「半助喰物帖」として記録されていきます。これがタイトルの由来。

食文化の変遷を感じさせるリアルな描写

そんな漫画「半助喰物帖」。読んでいて「ウマイなぁ」と思うのは、食事や調理方法など食文化の変遷が、物語の随所に自然に織り込まれているところ。

例えばとある日のおやつ。「現代の羊羹」を食べた半助は、その甘さにビックリ!実は150年前は白砂糖は高級品であり、当時の羊羹は今ほど甘くなかったのだとか。そこから半助は手作り羊羹づくりを始めるのですが、その調理過程、そしてそれを食した香澄の反応に、食文化の変化を感じます

また半助が現在の台所で色々と気づいていく調理シーンも、興味深いもの。大根をすりおろす時に「『おろし金』が金物でない」ことに軽く笑ったり(プラスチックだから)、「だし」が粉末状に加工されていることに感心したり、冷蔵庫で食材を保存できることに驚いたり。

丁寧な描写のひとつひとつが「タイムスリップしてきたお侍さん」を演出するとともに、食文化・食の歴史を感じさせる作りになっていて、面白い。「現代の当たり前」にも長い期間を経た変化・進化があるのだなぁ、と思わせてくれます。

半助は過去へ戻れるのか?

香澄の台所番として、徐々に現代に馴染んでいく半助。香澄の友人・同僚や、マンションの大家さん夫妻らとも親交を深め、食卓を囲んだりするように。服装は洋装、頭はちょんまげのままで街歩きをしたりも(笑)。

しかし彼は、過去に家族や仲間を残している「侍」。過去では行方不明扱いとなっている彼の身を案じる妻や主君の描写もあり、「半助の元の時代への帰還」が物語の大きな見どころに。

そして迎えた最終6巻では、過去への帰還の道が開かれ…?と同時にそれは香澄との別れも意味するもの。さて結末やいかに!…といった感じの「半助喰物帖」。ラストはすっきりさわやか。全6巻の積み重ねが大きく結実した、満足の完結でした

まとめ

以上、草香去来さん・灯まりもさんの漫画「半助喰物帖」の感想・レビューでした。過去から来た侍が現代OLの台所番となる、という突飛な話ですが、非常に丁寧な描写で予想以上に読ませる漫画です。

まあ、あまり堅苦しいことは考えずに、エプロン姿のお侍さんの奮闘と、半助たちのあたたかな食事風景を楽しんでみてください。読んでいるうちに、きっと頬が緩んでしまうでしょう。

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