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漫画『IPPO』感想―「いい靴」を追い求める若き革靴職人

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オーダーメイドの革靴って作ったことありますか?

私はあまり革靴を履く機会の無い人間なのですが、そんな自分でも自分だけの靴が欲しい!と思ってしまう漫画に出会いました。

オーダーメイドの靴を作る若き職人・一条歩を描いた漫画、えすとえむ氏の「IPPO(イッポ)」です。

2017年2月刊行の5巻で完結。スタイリッシュな雰囲気・世界観が印象的な漫画です。

「IPPO」感想・レビュー

あらすじ

イタリア人の靴職人、フィリッポ・ジェルリーニを祖父に持ち、12歳から祖父のブランド「ジェルリーニ」の下で修行を積んだ青年、一条歩(いちじょうあゆむ)・22歳

かつてフィリッポが東京で構えていた店舗を、新たにビスポーク(注文靴)専門店「IPPO」としてオープンする。

歩が手がけるのは、客の希望に合わせてつくるフルオーダーの靴

一足30万円以上、生活必需品でありながら贅沢品でもあるビスポークに、IPPOを訪れる人々はそれぞれの夢と希望を重ねる。

祖父の思いを胸に、確かな技術と創意工夫でそのオーダーに応えていく歩。

いい靴とは
美しくあるべきだ
強く 歩きやすくあるべきだ
そして…

雰囲気のある注文靴の世界

「職人」を描いた漫画は数多くありますが、「IPPO」の主人公はオーダーメイド専門の革靴職人。イタリア由来の注文靴職人ということで、全編にオシャレ感が漂います。

しかし嫌味な感じはまったくなく、洗練された雰囲気が心地いい

30万円以上の注文靴(ビスポークシューズ)を顧客との対話を交え、22歳という若さながらプライドを持って作り上げる歩。

そして完成した革靴。

足元におさまるその感触に、満足の笑みを浮かべる顧客たち。

それを微笑ましく見つめる歩。

その様子が、何ともいい雰囲気。なんだか自分自身がビスポークを作ってもらったような気分になり、心地よい。

1話のラストで、クライアントが仕上がった靴を履く構図が印象的。

スッ、と立って足元の靴を眺めるのですが、靴を細かに描いていないのに「いい靴」であることが伝わる描写。この雰囲気作りがウマイ。

ヒロイン・結の存在

「IPPO」では基本、靴を求める人たちのドラマ、そして靴に向き合う職人としての歩が描かれます。

そんな物語に潤いを与えるのが、第2話で登場するヒロイン・結(ゆい)。2年前の交通事故で左足を失った彼女。次の一歩を踏み出すための靴が欲しい、とビスポークをオーダーします。

そんな結が次のステップを踏み出せるようにと、気持ちを込めて靴を創り上げる歩。出来上がった素敵な靴と、歩の言葉に微笑む結。

彼女は第2話以降、要所要所で物語に絡むように。歩に新たな仕事を依頼したり、時に相談を受けたり、といった間柄に。

大人の雰囲気を持った女性。歩との微妙な距離感が何とも絶妙で素敵な関係なのですが、果たして歩とは…?

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葛藤する主人公・歩

「よい靴職人」である、あろうとする歩。

客のオーダーに応えすぎる八方美人的なスタンスゆえか、時に同業者から「IPPOの靴は美しくない」「ポリシーがないのか」と反発されることも

「いい靴とは何なのか?IPPOの目指すものは何か?」

最終5巻では歩が、自身の血縁に靴をつくる様子が描かれます。

自分の靴作りを見つめ直し、やがて歩が出した「いい靴」に対する答え。それが何とも素敵で…。静かな感動があります。

まとめ

というわけで、えすとえむさんの漫画「IPPO」全5巻。

職人のプライドと静かな情熱を感じるお仕事漫画として、洗練された大人のドラマとして、読んで良かった!と思える作品でした。

革靴を履く人も履かない人も、きっと満足のいく読後感を味わえるはず。

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