『猫のお寺の知恩さん』に続くオジロマコトさんの青春漫画『君は放課後インソムニア』。不眠症(インソムニア)を抱える高校生男女の、さわやかなコミュニケーションが描かれます。
連載は小学館『週刊スピリッツ』で、全14巻完結済み。以下『君は放課後インソムニア』の主なあらすじ・面白さ・見どころを、極力ネタバレ無しでご紹介します。
『君は放課後インソムニア』感想・レビュー
あらすじ
「失恋して飛び降りた女子部員の霊が出る」という噂のある高校の天文台。中見丸太(なかみ・がんた)は眠りこける同級生・曲伊咲(まがり・いさき)に遭遇する。
互いに不眠症という悩みを抱えていることを知った二人、天文台で話すうちに、これまでに無い安眠を得られることを発見。
霊の噂で人が来ないことをいいことに結託、無人の天文台を安眠の場に作り変えていく。
そして長く退屈な夜をおもしろくするため、「夜のおたのしみ会」を発足。深夜の街へと繰り出し、秘密を共有していく…。
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悩みと秘密を共有する高校生男女
同じクラスでありながら全く接点のなかった高校生男女。
二人が「不眠症」という共通の悩みを解消しようと前向きに努力、距離を縮めていく物語『君は放課後インソムニア』。
現在は無人の天文台を、より良い眠りを目指してリフォームすることに。誰にも知られてはいけない、秘密の安息の場所を作り上げていきます。
他人が理解しづらい「夜、眠れない」という悩みと、平穏な眠りを提供してくれる秘密の場所。
悩みと秘密を共有した「二人だけの安眠活動」に、静かなワクワクが…!
天文部の復活を目指して…
しかし学校内で秘密の場所が長く維持できるはずもなく。やがて天文台の秘密は女性養護教諭・倉敷先生の知るところに。
不純異性交遊を疑われ、「安眠の地」存続のピンチ…!
そこで丸太は、天文台が唯一の安眠の場所であることを必死に訴え、「俺が天文部の部員になればここにいられますか」と天文部の復活を直訴。
そして検討の結果…天文部が復活!丸太と伊咲の居場所が守られることに。
良かった良かった!…と言っても、部活として認められた以上、実績を残していかなければならない。さて二人は、天文部員としてどのように活動していくのか…?
不眠症という苦しみから、不思議な結びつきで二人に縁の深い「夜」に関わっていくという、この過程が何ともドラマティック!
そしてちょっと人見知りだが偉大な(?)OG・白丸先輩や、友人たちの力を借りながら、星空の撮影や観測会を企画していく丸太と伊咲。
二人がほぼゼロから部活動を立ち上げていく青春感たっぷりの物語が、『君は放課後インソムニア』のもう一つの見どころとなっていきます。
ほとばしる「感情」が心に響く!
「夜の天文台」という特殊な空間に居場所を見つけ、平穏な時間を共有していく二人。
寄り添って眠るその姿に、見ている方も不思議な安心感・安らぎを感じます。
しかし巻が進むに連れ、少しずつ「伊咲の秘密」が明らかに。
成長期に起こった家庭の問題から、不眠症になったという経緯を持つ丸太。しかし伊咲が眠れない理由は、ちょっと特殊で…?
丸太に心を開き、自身の秘密を打ち明けてる伊咲。一方、天文部部長として次第に責任感に目覚め、活動に本腰を入れていく丸太。
二人は自分たちの安息の場所を守り、安らかな眠りを手に入れることができるのか…?
そんな高校生男女の「夜」を絡めた爽やかな青春が『君は放課後インソムニア』の大きな魅力。
そしてそれを形作る作者・オジロマコトさん独特の描画・間の取り方が、前作『猫のお寺の知恩さん』に続いてとても素晴らしい!
セリフ少なめで、サラサラ~っと読めてしまうオジロマコトさんの漫画。ですが表情や風景、コマのテンポで演出される「間」など、セリフ以外の漫画表現でキャラクターの心情が演出されていて、読むたびに新しい発見があります。
兎角わかりやすさが求められる最近の漫画では、ともすればセリフやモノローグで心情を説明しがち。そこを漫画技法で読者に伝えらてくる表現力に、匠の技を感じます。
そんな「漫画ならではの面白み」を、二人が過ごす夜とともにじっくり楽しんでみてください。
まとめ:静寂の中にドラマを感じる青春漫画
以上、オジロマコトさんの『君は放課後インソムニア』感想・レビューでした。
丸太と伊咲、眠れない二人の爽やかな交流。静かなストーリーの中に多くのドラマが詰まっている青春漫画です。
それにしても伊咲というキャラクター、不思議な魅力があります。
オジロマコトさんのヒロインらしい、ちょっと太めの眉毛が特徴的。コロコロ変わるその表情、見ていて飽きません。跳ね返ったくせっ毛を、ピンピンしてみたい。
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