「君は放課後インソムニア」―天文台で安息の時を過ごす、眠れない少年少女

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年上従姉妹との、ちょっとドキドキな田舎暮らしを描いた「猫のお寺の知恩さん」。

作者・オジロマコトさんが次に描くのは、不眠症を抱える高校生男女のさわやかコミュニケーション「君は放課後インソムニア」

不眠症を意味する「インソムニア」をタイトルに冠した「君は放課後インソムニア」。2020年8月現在、単行本は4巻まで刊行中で、以下続刊。小学館「週刊スピリッツ」にて連載中です。

「君は放課後インソムニア」感想

あらすじ

「失恋して飛び降りた女子部員の霊が出る」という噂のある、高校の天文台。

文化祭の資材調達で天文台に向かった中見丸太(なかみ・がんた)は、そこで眠りこける同級生・曲伊咲(まがり・いさき)に遭遇する。

互いに夜ねむれないという悩み・不眠症を抱えることを知った、丸太と伊咲。二人は天文台で話すうちに寄り添い、まどろみ、これまでに無い安眠を得られることを発見する。

霊の噂で人が来ないことをいいことに、無人の天文台を結託して安眠の場に作り変えていく二人。

そして長くて退屈な夜をおもしろくするために、「夜のおたのしみ会」を発足。夜の街の冒険へ繰り出し、秘密を共有していく…。

君は放課後インソムニア(1) (ビッグコミックス)オジロマコト:小学館

悩みと秘密を共有する二人

以上が「君は放課後インソムニア」のはじまり。

同じクラスでありながら全く接点のなかった二人の高校生男女が、「不眠症」という共通の悩みを前向きに解消しようと努力、距離を縮めていく、という物語です。

その舞台となるのは、高校の天文台。かつては天文部が活動していましたが、現在は無人のその場所を、二人はより良い眠りを目指してリフォームすることに。

誰にも知られてはいけない、秘密の安息の場所を作り上げていきます。

他人が理解しづらい「夜、眠れない」という悩みと、平穏な眠りを提供してくれる秘密の場所。悩みと秘密を共有した、二人だけの密やかな活動がスタート。

天文部の復活へ

しかし学校内で秘密の場所が長く維持できるはずもなく、やがて天文台の秘密は女性養護教諭・倉敷先生の知るところに(先生は丸太が不眠症であることを知っている)。

不純異性交遊も疑われるも、丸太は天文台が唯一の安眠の場所であることを必死に説明。「俺が、天文部の部員になればここにいられますか」と、天文部の復活を直訴。

そして検討の結果…天文部が復活!丸太と伊咲の安眠の地が守られることに。

と言っても、部活として認められた以上、実績を残していかなければならない。天文部員となった二人は、天体写真コンテストで受賞歴のある偉大なOG・白丸先輩(めっちゃ人見知りな女子)の力も借りながら、星空の撮影や観測会を企画していくように。

不眠症という苦しみから、不思議な結びつきで二人に縁の深い「夜」に関わっていく、という過程がとてもステキな物語。

ほぼゼロから部活動を立ち上げていく、というのも青春感がたっぷり。「君は放課後インソムニア」という物語の大きな核となっていきます。

セリフ外からほとばしる「感情」

眠れない辛さの共有と、天文部員としての活動を通して、徐々にその距離を縮めていく丸太と伊咲。二人はやがて…。

…というのは本編で楽しんでいただくとして(笑)。

高校生男女二人の「夜」を絡めた爽やかな青春が「君は放課後インソムニア」の大きな魅力なのですが、それを形作る作者・オジロマコトさん独特の描画・間の取り方が、「猫のお寺の知恩さん」に続いて本作でも遺憾なく発揮されていて、とても素晴らしい。

オジロマコトさんの漫画ってどちらかというとセリフ少なめで、サラサラ~っと読めてしまうのですが、表情や風景、コマのテンポで演出される「間」など、セリフ以外の漫画表現でキャラクターの心情が演出されていて、読むたびに新しい発見があります。

兎角わかりやすさが求められる最近の漫画では、ともすればセリフやモノローグで心情を説明しがち。

そこをビジュアル・漫画技法で読者に伝えられるその表現力に、匠の技を感じます。こういうの、オジロマコトさんは本当にウマイですね。

伊咲の秘密

時には「体を動かせば眠れる」などと誤解を受けがちな不眠症。

しかし丸太と伊咲、二人にしかわからないその苦しみが、二人でいることによってやわらぎ、安らかな眠りにつながっていく。

そんな二人を結びつけるのは夜の天文台という、独特な空間。

そこに居場所を見つけ、平穏な時間を共有していく二人が寄り添って眠る姿。いやらしさがなく、見ている方も不思議な安心感・安らぎを感じます。

そして巻が進むに連れ、少しずつ明らかになっていくのは「伊咲の秘密」

成長期に起こった家庭の問題から、不眠症になった丸太。しかし伊咲が眠れない理由は、ちょっと特殊で…?

丸太に心を開き、自身の秘密を徐々に明らかにしていく伊咲。天文部部長として次第に責任感に目覚め、活動に本腰を入れていく丸太。

二人は自分たちの安息の場所を守り、安らかな眠りを手に入れることができるのか?これからの展開が楽しみです。

まとめ

以上、オジロマコトさんの「君は放課後インソムニア」、4巻までの感想でした。

中見と伊咲、眠れない二人の爽やかな交流を描く一作。静かな物語運びの中に見どころの詰まっている青春漫画です。

それにしても伊咲というキャラクター、不思議な魅力があります。

オジロマコトさんのヒロインらしい、ちょっと太めの眉毛が特徴的。基本的にカワイイんだけど、時にちょっとブチャイクな感じにも。コロコロ変わるその表情、見ていて飽きません。跳ね返ったくせっ毛を、ピンピンしてみたい。

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