「機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト」全12巻―”エンジェル・コール”がもたらす人類滅亡の危機

はじめに書いておきますが、この漫画は相当おもしろい。好きなガンダム漫画の中でも個人的にトップ3に入るおもしろさ。

長谷川裕一さんの「機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト」全12巻。「機動戦士クロスボーン・ガンダム」の流れを汲む、クロスボーン・サーガの1作。宇宙世紀シリーズとしてはVガンダムの時代に突入します。

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あらすじ

時はUC0153、ザンスカール帝国が地球侵攻を進め、リガ・ミリティアと戦いを繰り広げる時代。

サイド3に住むごく普通の少年・フォント。ザンスカールの最終兵器「エンジェル・ハイロゥ(天使の輪)」の存在を偶然知り、Webサイトにその情報を載せてしまう。

その後、学校に迷い込んだ不思議な少女・ベルに遭遇。彼女に導かれた先には、木星の特殊部隊「蛇の足(セルビエンテ・タコーン)」と名乗る盲目の男、カーティス・ロスコが。

長谷川裕一「機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト」1巻
[長谷川裕一 著 KADOKAWA/角川書店「機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト」1巻より引用]

フォントが危険な状態にあると告げるカーティスは、フォントにふたつの道を選ばせる。われらと共に来るか、それともここで死ぬか。

その時サイド3を、ザンスカールのモビルワーカー・サンドージュ部隊が奇襲。フォントを捕獲したザンスカール兵は、彼に問う。「”エンジェル・コール”を知っているな?」

絶体絶命のピンチ!そこに現れたのは、かつて「神の雷」作戦で失われたMS「クロスボーン・ガンダム」だった…!

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Vガンダム時代に突入したクロボン

以上が新章に突入したクロスボーン・サーガ「機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト」の導入部。

「機動戦士クロスボーン・ガンダム」「機動戦士クロスボーン・ガンダム 鋼鉄の7人」では、宇宙海賊クロスボーン・バンガードと木星帝国(ジュピター・エンパイア)の戦いが描かれました。「F91」のUC0123を起点に、年代的には無印クロボンはUC0133、「鋼鉄の7人」はUC0136。

そして17年の時が流れ、UC0153となった「ゴースト」。メインの敵がザンスカール帝国となり、TVアニメ「機動戦士Vガンダム」とリンクしたストーリーに。謎の兵器「エンジェル・コール」をめぐる戦いが繰り広げられます。

「エンジェル・コール」をめぐる戦い

「エンジェル・コール」が何なのか、はネタバレになるので割愛。ヒントとしては、ザンスカールの最終兵器「エンジェル・ハイロゥ」の能力を補完するもの。

その建造には木星(共和国)も関わっている(※「ゴースト」での設定)エンジェル・ハイロゥ。人類の闘争意欲を鎮めるために、サイキッカーたちの力を増幅して地球規模で生命の眠りを引き起こす(Vガンダム参照)。

その先にさらなる恐怖をもたらすのが、エンジェル・コール。カーティスとテテニスが過去に難破したクロスボーン・バンガードの補給船から、クロスボーン・ガンダムの予備機と共に発見された「それ」は、人類を破滅させる力を持つ。

長谷川裕一「機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト」2巻
[長谷川裕一 著 KADOKAWA/角川書店「機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト」2巻より引用]

しかしエンジェル・コールは一人の人物によって持ち出され、地球圏へ。ザンスカール帝国のキゾ中将+木星の特殊部隊「サーカス」と、新生クロスボーン・バンガードとなった木星穏健派のカーティス一派+リガ・ミリティアのリア・シュラク隊による、エンジェル・コールをめぐる戦いに突入します。

新たなガンダム「ファントム」

戦いの中で活躍するのはカーティスのクロスボーン・ガンダムや、ゾロアットやビクトリー・ガンダムなど、Vガンダムでお馴染みのMSたち。

そこに参戦するのは、サーカスが駆る一騎当千機(文字通り1機で1000機に対する、がコンセプトのMS)。デスフィズ・ガラハド・バイラリナなど、「ゴースト」オリジナルのMSがフォントたちの前に立ちはだかります。

そのフォントが物語中盤で搭乗し「ゴースト」の主役機となるのが、「ファントム」。もとはサーカスが開発したミノフスキー・ドライブ搭載の実験機。V2ガンダムに比べるとその完成度は50%という「失敗作」です。

長谷川裕一「機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト」4巻
[長谷川裕一 著 KADOKAWA/角川書店「機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト」4巻より引用]

ですがミノフスキー・ドライブの不安定さを抑えるためのIフィールド発生装置がさらなる不安定さを引き起こし、全身にIフィールドの「嵐」をまとう、という意外な力を発揮する機体。

正確にはファントムは「ガンダム」では無いのですが(少なくとも初期では)、Iフィールド発生時に額に角状の炎が浮かぶ様は、まさにガンダム。鬼神のようなその姿にたがわぬ、迫力ある戦いを見せてくれます。

成長する主人公・フォント

そんな「ゴースト」の物語。設定やMS戦の迫力がとても魅力的なのですが、個人的に特に印象に残ったのが主人公である少年・フォントの成長。

スペースコロニーに住み、美少女型のAI・ハロロを入れた端末をパートナーとする、どちらかと言えばオタク寄りのメガネ学生。全然、主人公っぽくない(笑)。

たまたま見つけたエンジェル・ハイロゥのデータから戦いに巻き込まれた彼ですが、ザンスカールのギロチンを目の当たりにし、その心情は徐々に変化。カーティスやベルら仲間たち、そして地球を守るために、自らの身を削っていきます。

長谷川裕一「機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト」7巻
[長谷川裕一 著 KADOKAWA/角川書店「機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト」7巻より引用]

しかしニュータイプらしき片鱗を見せつつも、もともとは一般人であるフォント。その戦い方がユニーク。AI・ハロロの計算を利用しながら、最適解を探り出し、劣勢を打開していく。

ガンダム・シリーズのどの主人公とも異なる立ち位置。しかし気づくと「がんばれ!」と応援してしまいたくなる、真っ直ぐさ・熱さを持つ主人公です。

そんな彼も、ある戦いのあとで精神的なダメージを負うことに。その苦境で力になったのは、クロスボーン・シリーズに欠かせない「あの人」で…。その顛末は読んでのお楽しみ。

まとめ

以上、「機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト」全12巻のレビューでした。

木星帝国との戦いから時を進めた新・クロスボーン。ザンスカール帝国やサーカスとの迫力・躍動感あふれる戦い、一度読み始めたら止まらないおもしろさです。

またベルやカーティス、そして文面の都合上割愛しましたが、元サーカスの一員で後にフォントの仲間となるジャック、敵役であり圧倒的な存在感を放つザンスカール・ギリ中将など、魅力的なキャラクターたちにも注目。

そして読後に心に残るのは、戦いを駆け抜ける少年・フォントの生き様。ガンダム漫画だけど、ある意味ガンダム漫画らしからぬ、不思議な気持ちを感じます。

なおこの漫画を楽しむためには、「機動戦士クロスボーン・ガンダム」「同・鋼鉄の7人」、またTVアニメ「機動戦士Vガンダム」の知識があった方が、より楽しめるでしょう。

そのため読むにあたり、若干ハードルは高め。ですが、アニメとは異なるガンダム作品として、シンプルに一つの漫画作品として、確かなおもしろさがあります。作者・長谷川裕一さんらしさが満開のガンダム漫画、ぜひ多くの人に読んで欲しい作品です。

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