オカルト・ホラー漫画漫画感想・レビュー短編漫画集

漫画『ネオ寄生獣』感想―萩尾望都・遠藤浩輝ら11人の漫画家が描くアンソロジー

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講談社「ネオ寄生獣」。11名の作家が銘々の「寄生獣」を描いたアンソロジーです。

本書は言わずとしれたホラー漫画の大傑作、「寄生獣」をテーマに、

  • 萩尾望都
  • 太田モアレ
  • 竹谷隆之
  • 韮沢靖
  • 真島ヒロ
  • PEACH-PIT
  • 熊倉隆敏
  • 皆川亮二
  • 植芝理一
  • 遠藤浩輝
  • 瀧波ユカリ
  • 平本アキラ

以上の漫画家さんたちが、オリジナル「寄生獣」の世界を描きます。

「寄生獣」は20年以上前から愛読している大好きな作品。また近年実写映画化・アニメ化もされ、長く読み継がれている作品です。

11名の漫画家さん、私は知っている人もそうでない人もいますが、1本ずつ感想を。

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感想・レビュー

「由良の門を」萩尾望都

大御所・萩尾望都氏による60Pの大作。収録作品の中で一番ボリュームがあります。

由井教授(寄生生物の専門家。覚えてる?)にあやされる田宮良子(田村玲子)の子ども、というショッキングな設定からスタート。親戚に引き取られて成長した彼女が、やがて出会う事件が描かれます。

うん、題材がまずスゴイ。寄生獣ファンならば確かに気になる。そしてドラマ感あふれる圧巻のクオリティ。他作品の追随を許しません。

ただこれ、「寄生獣」でなくても成り立つんでないかい?とも思いました。単純に萩尾望都氏のオリジナル短編として読みたかったかも。

ネオ寄生獣 (アフタヌーンコミックス)岩明均,萩尾望都,太田モアレ ほか:講談社

「今夜もEat it」太田モアレ

「鉄風」の太田モアレ氏描く、とある寄生生物の一生。

会社に勤め、結婚し、子を成し、孫が生まれ、歳を取る(見かけを変化させる)…。確かにそんな生涯を送った寄生生物がいたのかも、と思わせる一作。

それが本編の描写・セリフを徹底的にパロって描かれる。めっちゃ面白いです。作者インタビューで「同人誌らしく」と述べられていますが、レベルの高すぎる同人誌。

ところで「鉄風」もおもろいよ。

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「ババ後悔す」竹谷隆之

作者の竹谷氏は造形作家さん。なのでこの6Pの短編もオール立体物による一風変わった作品。老体に寄生してしまった寄生生物の嘆き。オチがちょっとわかりにくいかな。

「PARACANT」韮沢靖

異なる時間・異なる太陽系が舞台の「寄生獣」。飼いならされた寄生生物が、格闘ゲームのファイターとしてバトルを繰り広げていたら、という話。迫力あるんだけど、あんま寄生獣が関係してないような。

「ルーシィとミギー」真島ヒロ

真島ヒロ氏のキャラクターの右手がミギーになったら?という設定。オリジナルを知らないので評価不能。

「教えて!田宮良子先生」PEACH-PIT

ちょっとかわいい新一とミギー、そして田宮良子が下ネタを交えて繰り広げるギャグ。うん、それなりに面白いです(笑)。こういうのもアリかな。

「変わりもの」熊倉隆敏

「安全な食事」のために、田舎を訪れた寄生生物。彼が出会ったのは、人間の家族を持つ「仲間」だった。その寄生生物が田舎で人間の生活を送る理由とは?

これ!これぞ「寄生獣」ですよ。絵柄・雰囲気とも本家に近く、ストーリーも寄生獣の後日譚として違和感がない。小道具として出て来る、本編設定の使い方もうまいですね。こういうのが読みたかった。

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「PERFECT SOLDIER」皆川亮二

本編でも少し話題のあった、「寄生生物の軍事利用」を描いた話。迫力あるんですが、寄生生物がそんなに簡単に人間に利用されるかな?

「ミギーの旅」植芝理一

不思議な世界を闊歩するミギーを描いた、ファンタジックな作品。

…と思いきや、ページをめくるうちに「仕掛け」に気づく。やさしいラストも心地良い。「ミギーの世界」をふくらませた楽しい作品です。結構好き。

「EDIBLE」遠藤浩輝

火星?で繰り広げられる、軍と寄生生物の戦いを描いたSF。

「EDEN」の遠藤浩輝氏による作品なので、安心のSFクオリティ。なのですが、ちょっと設定がわかりにくい?いろいろ詰め込み過ぎた感も。本家をオマージュしたと思われるシーンがチラホラあるのがポイント高し。

「寄生!!江古田ちゃん」瀧波ユカリ

瀧波ユカリ氏はキライではないんですが、これはちょっとお下劣ですね(苦笑)。「江古田ちゃん」も未読なので評価不能。

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「アゴなしゲンとオレ寄生獣」平本アキラ

「アゴなしゲンとオレ物語」と「寄生獣」が、文字通り融合した作品。原作の使い方がうまい!ですね。「アゴなし~」を多少なりとも知らないとわかりづらい点はマイナスですが、笑える作品です。

まとめ

以上、ホラー漫画「寄生獣」のアンソロジー集「ネオ寄生獣」の感想・レビューでした。本家に近い作品からSF・ギャグ・果ては造形作品まで、バラエティに富んだ作品集です。私は半分ぐらいの作品が許容範囲かな~。熊倉隆敏氏のような作品がもっとあれば嬉しかったかも。

まあ色んな作風に触れられる、というのがアンソロジーの良いところなのですが。広い心で多彩な作品を楽しめる方ならばおすすめです。

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