一色登希彦版「日本沈没」全15巻―圧倒的なスケールのSFヒューマン・ドラマ

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オリジナルは小松左京氏による小説である「日本沈没」。1970年代に映画化、さいとう・たかを氏により漫画化もされたSF作品です。その原作を2006年に再度コミカライズしたのが、一色登希彦氏による漫画版「日本沈没」です。

日本全体が物理的な「沈没」という、未曾有の事態に否応なしに巻き込まれていく迫力のSF・パニック作品。現在は全15巻が電子書籍版で刊行。Kindle Unlimitedの対象にもなっています(※記事作成現在)。

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「日本沈没」全15巻レビュー

あらすじ

東京・新宿の雑居ビル。その地下で突如、異常に熱が高まり、「ビル全体が地面に沈み、飲み込まれる」現象が発生。

偶然、ビル地下の居酒屋に居合わせたのは、深海潜水艇パイロット・小野寺俊彦、東京消防庁ハイパーレスキュー・阿部玲子、異端の地球物理学者・田所雄介の三人。

田所の分析、小野寺の機転、阿部の行動力で、居合わせた人々は辛くも難を逃れる。

しかし東京の一角で起こった「ビル消滅事件」は、これから日本全体を巻き込む、未曾有の災害の予兆に過ぎなかった…。

日本沈没 1巻一色 登希彦:Beaglee

「日本沈没」感想

…以上が物語の発端。これを契機に以降、文字通り「沈みゆく日本」が描かれます。

全15巻となかなかのボリュームながら、一気読み必至のおもしろさをを持つ漫画「日本沈没」。その魅力は、

  • 局地的な緊迫感
  • 大スケールの描写
  • 政治的判断・駆け引き
  • ヒューマン・ドラマ

といった多彩な観点から生み出されます。

まずレスキューシーンなど、局地的に描かれる場面場面の緊迫感がスゴイ。日本沈没の「始発点」となるビル消滅事件はじめ、物語の随所に登場する人命救助シーン。生と死が隣り合わせに存在する現場において、緊張感あふれる展開が連続します。

またそれと対象的な、日本全体に関わるスケールの大きな部分の描写の迫力。地震や津波などの天変地異から、日本の地下深くで進行する深海の大変動など、人の手の届かない絶望的な。「おもしろい」というには語弊がありますね。リアル過ぎて怖い

さらに政治的な駆け引き・判断の描写。日本国首相をはじめ、国の存亡をかけて逡巡し時には犠牲を黙認、冷酷ともいえる判断を下す人々。大局的な見地からの行動はやむなしと思いつつも、どこか薄ら寒いものが。

そして、その合間で繰り広げられる、主人公二人を中心としたヒューマン・ドラマ。小野寺と阿部。心の絆で結ばれながら、運命に翻弄される一組の男女。果たして彼らがたどり着く場所は…?

そんな様々な魅力を持つ個別の要素が、激しく、複雑に絡み合い、ぐいぐい物語の世界へ引き込まれていく。気づくと読み手自身が大きなうねりの中に取り込まれていくかのような。

そして読者の頭上に常にのしかかるのは、「日本沈没」の4文字。あたかもその世界にいるかのような一体感・没入感に、今、自分が住んでいる場所も沈むのではないか。そんな得も言われぬ不安感がのしかかります。

みどころ

大局的にも局地的にも緊迫の場面が連続する「日本沈没」。その中から個人的に、特に印象に残った「日本沈没」の見どころをご紹介。

まずは冒頭、第1巻のビル消滅事件。沈みゆくビルからの緊迫した脱出劇。「ビルが沈む」という訳のわからない状況で、ひとつ判断を誤れば押しつぶされるかもしれないという恐怖。のっけから手に汗握ります。

続いて第2巻。小野寺が田所とその助手・幸長を伴って、潜水艇で深海1万メートルに潜るシーン。日本沈没を予感させる「謎」の発見と、潜水艇を襲う危機。暗い海の底の恐怖感が半端ない。

第4巻。京都で起こる地震を「100%の確率」で予測した学者・中田。そしてそれを受けて、政治的決断を迫られる総理・緒方。「いつ、どこそこで地震が起こる」と分かっても、真実を告げたところで誰がそれを受け入れるのか?描かれる、理想と現実のジレンマ

第6巻で描かれる、東京を襲う地震。過去事例を踏まえながら描かれる、災害に弱い都市への警鐘。満員の電車、揺れる高層ビル、水没する地下。そして災害後に起こりうる火災の危険。絶望的とも言える、恐怖があります。

これらは多くの見どころを持つ「日本沈没」の一部。いずれもエンターテイメントの枠を超えた、リアルな描写に惹きつけられます。

気になる部分もあるが

なお本作についてフェアに書いておくと、気になる点も若干あります。

例えば日本沈没を食い止めるために、日本近海で◯◯を使うシーン。周辺諸国からの反発が描かれないのが不自然。他にも原発に関する描写が無いのが、物足りないところ。

またネットの感想もいくつか見ましたが、ラストに対しては賛否両論あるよう。漫画としては全15巻で完結していますが、最終ページには「第一部 完」とあるのも気になります(第二部の存在については不明※)。

ただ個人的にはラストも含め、全15巻の内容には満足しました。エンタメとしても災害に対する教訓としても、得るものが大きい漫画。読み終わったあとは、なんだか足もとが何だかおぼつかなくなるような錯覚を感じます。

特に序盤1・2巻は、一度読み出すと止まらない迫力・緊迫感が。一度「日本沈没」の世界に足を踏み入れると、きっとその圧倒的な魅力を感じていただけるでしょう。

【追記】
「日本沈没」第一部のその後を描く「日本沈没 第二部」は、谷甲州氏による上下巻の小説が刊行されています。

日本沈没 第二部(上) (小学館文庫)小松左京,谷甲州:小学館

まとめ

以上、一色登希彦版・漫画「日本沈没」全15巻のレビューでした。地震や数多くの災害に遭遇してきた日本に住む人間にとって、「おもしろい」の枠におさまらない、リアルな漫画です。

現在は電子書籍版での刊行ということで、試し読みがしやすくなっていますので、さわりだけでも「日本沈没」の世界に触れてみてください。先が気になって仕方なくなる!はず。全15巻を揃えるのはちょっと…という方も、Kindle Unlimitedで全巻が読めるので(※)、ぜひ一気読みしてみてください。

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