漫画家・谷和野(たにかずの)さんのおすすめ漫画紹介です。
谷和野さんは、主に小学館の女性向け漫画雑誌「flowers(フラワーズ)」に、短編・読切漫画を発表されている漫画家さん。
2014年の初単行本『いちばんいいスカート』と次作『魔法自家発電』が、宝島社の『このマンガがすごい!』オンナ編にランクイン。以降もコンスタントにコミックスが刊行されています。
谷和野さんの作風・漫画の特徴など
谷和野さんの描く各作品の舞台は、19~20世紀初頭(?)のヨーロッパ風な風景から、日本の現代劇まで、幅広いもの。
懐かしさの中に独特な柔らかさと美麗さが同居している、という感じの絵柄で、少年少女の成長、人と人との繋がり、ファンタジー風味の出来事などが、優しいタッチで綴られていきます。
発売中のFlowers3月号にオ―プンクロゼット5「ドレイプス」載ってます
どうぞよしなに🙇 pic.twitter.com/qAyr0hSWOE— 谷和野 (@yaniwaniomomuro) January 28, 2022
類似の漫画が思いつかない独特のテンポ・空気感を持つ作品群は、文章で説明するのがすごく難しい!のですが、一度読み始めるとその世界の中に思わず没入していってしまう、不思議な魅力があります。
コミックス紹介
以下、谷和野さんの既刊単行本の紹介です(2022年2月時点)。
いちばんいいスカート
谷和野さんのデビュー単行本『いちばんいいスカート』(2014年刊行)。お母さんのスカートの中身に魅せられた男子描く表題作『いちばんいいスカート』ほか、現代劇・ファンタジーなど個性的な全6編を収録。
「こたつ」を擬人化しその心情を描く『おこったちゃん』、巨大なクリスマスツリーを街を見守る聖母に見立てた『みんなの、大きなかわいい子』など、初期作品はなかなか奇抜な内容(笑)。その不思議な世界観を存分に堪能していただきたい。
オープンクロゼット
「お屋敷の窓をただ開け閉めするだけの仕事」に就く少女が、時計を失くしたことから不思議な少年に出会い、やがて…『風の開け閉め』ほか、全4編収録の短編集『オープンクロゼット』。2023年12月現在、単行本1~3巻が刊行されています。
足に怪我をした野球少年が、猫を追ってたどり着いた先で出会ったのは…という現代劇『藍の上 青の下』が、爽やかな読後感で良い短編。なお本作は単行本の1巻で、記事作成現在、月刊「flowers」誌にて読切シリーズが連載中。
イン・ザ・ポケット 谷和野よみきり集
幼い頃、叔母のポケットに入って夜会へ行く、という不思議な体験した女性。やがて成長し、世の中の事を知っていく…という表題作ほか、6つの短編と3つのショート・ストーリーを収録した『イン・ザ・ポケット 谷和野よみきり集』(2020年刊行)。
美麗かつ、どこか懐かしさ・柔らかさを感じさせる絵柄で紡がれる、童話・寓話的なファンタジー・ストーリーの数々。谷和野さんの発想の豊かさがひしひしと伝わってきます。
リリリライト
大学で初めて出会った男子にプロポーズした女子学生。ふたりの間には過去より不思議な繋がりが…?という表題作『リリリライト』と、その登場人物の一人にスポットを当てたスピンオフ的物語『ピクニックの前』などを収めた読切集(2018年刊行)。
『リリリライト』以外にも、美麗な筆致で描かれる独創的なファンタジーが多数。読みながら思わず「フフッ」となってしまう。なお本単行本には、谷和野さんのデビュー作『坂の上の雲』が収録されています。
はてなデパート
とあるデパートを舞台に、そこに集う人々が体験する不思議な出来事をハートフルに描くオムニバス・ストーリー『はてなデパート』(2016年刊行)。
夜のデパートに一人取り残された少女は、大人の姿に…『バウンド』。家具売り場の販売員男性が出会った少年、その正体は…?『カムホーム』。…などの短編を読んでいるうちに、やがて浮かび上がってくるデパートの過去と現在。泣ける…。
魔法自家発電
自分を醜い”けもの”だと思い込んでいるイケメン男子と、彼から”天使”として見られている地味目な女子。そんな二人の心の交流描く表題作『魔法自家発電』などを収録した読切集(2015年刊行)。
ファンタジックな雰囲気や、少年少女の心の成長を描くストーリーなど、今後の作品につながる世界観が確立されていく過程が見てとれる、作者2冊目のコミックス。心優しき女性ロボットの冒険描く、『Whoにつける名前』全3話も収録。
アドレスどちら
谷和野さん初?の長編漫画『アドレスどちら』(1巻が2019年刊行)。子どもたちが寮で暮らし、学校の先生を「お父さん・お母さん」と呼ぶ世界。そこに「両親」と暮らしていた異質な男の子が連れてこられて…という物語。
少年少女の交流から、やがて精神的な自立が芽生えていく過程を、ちょっとミステリアスな背景にのせて描いていく…のですが、2巻以降は刊行されず、連載状況も不明…。続きが気になるところ。巻末収録の短編『冬の落とし子』が爽やか&ファンタジックでとても良い!
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まとめ
以上、谷和野さんの漫画・コミックス紹介でした。
各話のストーリーの抑揚は比較的控えめ。ですが読後しばらく経つと、胸の中に何だかジワジワとせり上がってくるものがあり、そしてまた別の作品を読みたくなってくる。谷和野さんの漫画には、そんな不思議な中毒性があります。
短編作品が多く気軽に読めるので、気になったコミックスをチェックしてみてください。既存の作品とは異なる、新たな漫画体験ができるでしょう。
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