「プリンセスメゾン」―理想の家を求めて女性たちは今日も

それぞれの人生、それぞれの生き方。そしてそれぞれが抱く「家」に対する想い。

池辺葵さんの漫画「プリンセスメゾン」を読みました。マンション購入を目標に頑張る女性「沼ちゃん」と、モデルルームの人々との交流を軸に、住まいに様々な思いを抱く女性たちを描く作品です。

地方の女子高生を優しく描くオムニバス「雑草たちよ、大志を抱け」を読んで以来、池辺葵さんの漫画がお気に入り。本作「プリンセスメゾン」は長編ですが、こちらも期待を裏切らぬおもしろさでした。

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「プリンセスメゾン」レビュー

理想の住まいを探す女性たち

居酒屋で働く独身女性・沼超さん(通称・沼ちゃん)。年収200万円代の彼女が、オリンピックを控えた東京で「理想の家」を求め、今日もモデルルームをめぐる。

そんな沼超さんと、彼女が足繁く通うモデルルームスタッフとの交流を中心に、「現代を生きる女性たちと家」が描かれます。

なお群像劇という一面も持つ「プリンセスメゾン」。沼ちゃんたちレギュラーが登場しない、住まいにまつわる女性のライフスタイルも、オムニバス的に描かれます。

雰囲気を作り上げる細かな描写

いやー、池辺葵さんの漫画、やっぱり良いわ…。

一言でいうと「雰囲気がある」なんですが、その雰囲気を形作りあげているのはキャラクターの表情、仕草、風景。

漫画だから当たり前じゃん、と思われるかもしれませんが、セリフに頼らないその表現力がスゴイ。

キャラクターだけではなく、背景にも注目。

人物の微細な表情の変化や、その心の内を表現しているかのような景色が描かれます。

池辺さんの作品は、おそらく他の漫画と較べてセリフはかなり少なめだと思われます。

それ故に、読者がキャラクターの心情を推し量る余地が充分にあり、「絵を読む楽しさ」を感じます。

心情を雄弁に語る「背中」

特徴的なのは女性たちの「背中」。

「プリンセスメゾン」では、女性たちが背中を向けているシーンが比較的多めな印象。

日々の生活の合間に見せる彼女たちの背中が、物言わずとも読者にその心情を語りかけてくる。

そんな素敵な表現を見せてくれます。

沼ちゃんの優しいつながり

「プリンセスメゾン」では、いろいろな女性(男性も少し)と住まいとの関わり・想いが描かれるのですが、やはりイチオシはメインの沼ちゃん。

彼女の朴訥とした雰囲気、しかし芯にある強さ。

日々はたらき、通帳を眺め、理想の間取りを想像し、時に少女のように眼をキラキラと輝かせる。

そんな彼女は足繁くモデルルームに通い、不動産屋さんと共に物件探しを繰り返す。

少しでも良い物件に巡り逢うために。

受付女性さんたちとは「沼超さん」から次第に「沼ちゃん」と呼ばれる仲に。

そんな沼ちゃんとスタッフさんたちとの心の交流が素敵で、ものすごく心に響きます。

大人になってからの友人関係

そのうちの一人、要さん。沼ちゃん勤務の居酒屋で親しくなり、やがて沼ちゃんの部屋に招かれます。

部屋で物件の話をしながら、要さんが沼ちゃんの横で何気に寝転ぶ。

彼女たちがお客とお店の関係から「友達」になった瞬間。

このシーン、すごく好き。

大人になってからの友達っていいですよね…。

まとめ

そんな静かなドラマにあふれた漫画「プリンセスメゾン」。

繰り返し読みたくなる魅力、マンガ表現の奥深さを感じさせてくれる作品です。

夜、寝る前に寝転びながらしっとりその雰囲気を楽しみたい、オススメの漫画です。

プリンセスメゾン(1) (ビッグコミックス)著者:池辺葵出版社:小学館発行日:2015-05-12

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