葬式にまつわる難事件をズバッと(?)解決する風変わりな探偵、「葬式探偵」もいよいよ見納め。
吉川景都さんのミステリー漫画「葬式探偵モズ」。2017年5月刊行(電子版は6月)の「モズ 葬式探偵の帰還」をもって、シリーズ完結となりました。
カバー左が「葬式探偵」こと百舌一郎教授、右がその助手(自称)・原田都。凸凹コンビが葬式にまつわる難事件を解決します。
「葬式探偵モズ」シリーズレビュー
概要
「葬式探偵モズ」シリーズは、もともと角川書店の「コミック怪」に連載されていた漫画。単行本1巻もKADOKAWAレーベルより発売されていました。
しかし「コミック怪」の休刊により、集英社「オフィスユー」へ移籍。若干の設定変更を加え、以降「モズ 葬式探偵の挨拶」「モズ 葬式探偵の憂鬱」とシリーズ作品を刊行。最新刊「モズ 葬式探偵の帰還」でシリーズ完結となった作品です。
主人公は、民俗学教授で全国各地の葬儀・風習を研究している百舌一郎と、とある事件をきっかけに百舌先生と親しくなった学生・原田都。二人が全国各地のお葬式で起こる事件の謎を解決する、というミステリーが描かれます。
なおKADOKAWA版と集英社版では、舞台となる年代が変更されていますが、基本は同一線上にあるもの。なので読まれる場合はKADOKAWA「葬式探偵モズ(1)」よりどうぞ(同タイトルの2巻以降はありません)。
また集英社オフィスユー版は、「モズ 葬式探偵の挨拶」「モズ 葬式探偵の憂鬱」「モズ 葬式探偵の帰還」がそれぞれ1・2・3巻にあたります。「モズ 葬式探偵の挨拶」には、KADOKAWA版で単行本化されなかった話も収録されています。
唯一無二の葬式探偵・百舌一郎
小柄で無表情。年がら年中黒いスーツを着込んだ、少し風変わりな教授・百舌一郎。普段はやる気のない教授生活ですが、「地方の葬式」に目がない性分。変わった土地で葬式が行われると聞くやいなや、即出発。そして訪れた先々で様々な事件が…という展開。
その土地々々ならではの、風習やしきたりが事件解決のカギとなる、というのがこの「葬式探偵」シリーズのおもしろさであり、ユニークなミステリー風味。
私も経験がありますが、お葬式って地方によって本当に変わるんですよね。知らない地域のお葬式に参列すると、「え、何それ。やり方がわからん!」なんてこともしばしば。
いろいろ理由があって形式が決まってきたのでしょうが、日本のお葬式、実に奥深さがあります。そこで起こる事件を百舌先生が、持ち前の知識を活かして派手に!…ではなく、葬式だけにしっとりと解決、というのがみどころ。
また、百舌先生はあくまでも大学教授であって職業探偵ではないのですが、専門的な知識から「葬式探偵」という役回りを担うキャラクター。この他に類を見ない存在が、実に印象的。
なおワトソン役である都も良い味を出しているのですが、都にはちょっと秘密が…。それは読んでのお楽しみ。
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興味深い「葬式」という文化
作中に登場する地方独特の葬儀模様。各巻のあとがきによると、本作に登場の風習は一部編集はあるものの、基本的に実在するそう。作者の吉川景都さん、「モズ」は事件と葬式が同時に進むので、毎回ネームが大変だったそうです。
現場がお葬式なので、進行上「人の死」は必然。時にはちょっと怖い話もあったり。ですが、そこは吉川景都さんならではのカラッとした絵柄もあいまって、意外と楽しく読めます(不謹慎?)。
そして最終巻「モズ 葬式探偵の帰還」ではこれまで描かれなかった「都の秘密」についてとうとう真実が!シリーズをずっと読んで来た読者も、ようやく胸のつかえが取れたのではないでしょうか。
まとめ
とういうわけで漫画「葬式探偵モズ」。残念ながらシリーズは全4冊で一区切りですが、独特のミステリー感覚を味あわせてくれる作品です。
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