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漫画『地底旅行』感想―地球の中心を目指す迫力の冒険譚

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ジュール・ヴェルヌの同名小説をコミカライズした意欲作「地底旅行」。恐ろしくも魅力的な地底の冒険を見せてくれた漫画ですが、最終4巻で完結となりました。

上記書影は2巻。地の底の海で戦う古代生物たち。迫力あったなぁ。作者は倉薗紀彦さんで、掲載誌はコミックビームです。

「地底旅行」全4巻レビュー

19世紀、地底への冒険

舞台は19世紀のドイツ。青年アクセルとその伯父・リーデンブロック教授は、十二世紀アイスランドの本の中から、ルーン文字で書かれた紙切れを見つける。

十六世紀の錬金術師であるアルヌ・サクヌッセンムの手によるそれには、地球の中心を目指す冒険者へのメッセージが記されていた。

秘密裏に探検に向かうことを決意したリーデンブロックと、強引に探検に連れ出されたアクセルは、一路アイスランドのスネッフェルス山へ。そこで二人は屈強にして寡黙な現地ガイド、ハンスを仲間に加える。

装備を整えたリーデンブロック、アクセル、ハンスの三人は、スネッフェルス山の頂きに立ち、火口を降る。大穴の側でサクヌッセンムの爪痕を見つけ、そこが地球の中心への入り口だと確信するリーデンブロック達。

大穴の底へと歩みをはじめる三人。かくして帰還困難な、地球の中心を目指す旅が始まった…!

以上が「地底旅行」のスタート。以降、アクセルの目を通して、リーデンブロックたち三人の地底冒険が描かれます。

地底旅行 1 (ビームコミックス)倉薗 紀彦:KADOKAWA

小説の世界をコミカライズ

漫画「地底旅行」は、1864年に発表されたジュール・ヴェルヌの空想冒険小説を、大胆にもコミカライズした意欲的な作品。私は原作未読のため細かい差異は分かりませんが、楽しく読むことができました。

火口から地下に降り、そして海抜0メートルのさらに下へ。頭上に大西洋が広がるという不思議な空間を、ただひたすら歩くリーデンブロック一行。

途中、二人とはぐれて暗闇の中で一人恐怖と戦うアクセル。通信機器も何も無い時代。知恵と勇気だけを頼りにピンチを切り抜けると、一行の前には広大な地底の海が。

筏を作り、海の向こうを目指すアクセル達。見渡す限り何もない航海の先にあるものは…。

といった感じで展開される、驚異的な冒険の数々。とにかく希望と絶望の繰り返し。アクセル達3人以外は、人間の存在しない世界。常に独特の緊張感がつきまといます。

物語を支える魅力的なキャラクター

この「地底旅行」が特異なのは、基本的な登場人物が三人のみで、しかも皆男性であること。カワイイ女の子の登場がヒットに繋がる近年の漫画界において、その剛毅さに惚れた(笑)。

リーデンブロックの義娘にして、アクセルの恋人であるグラウベンという女性がいるのですが、安易に地上を描かないため、出てくるのはほぼ序盤のみ。地下世界の雰囲気を大事にした徹底ぶりがうかがえます。

そんな物語を創り上げるのは、個性豊かなキャラクター。

学者でありながら無骨で逞しく、傲岸不遜で変人、しかし飽くなき冒険心と探究心を持つリーデンブロック教授。「教授」という肩書らしからぬ、破天荒な行動力に目を引きつけられます。

そしてもう一人、無口で無表情だが、強い意思と着実な実行力を兼ね備えた大男・ハンス。無謀とも言える冒険ですが、静かで圧倒的な雰囲気を持つハンスの存在が、不思議な説得力を与えています。

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スケールの大きな空想世界の迫力

その彼らが足を踏み入れたのは、地下世界に広がる広大な空間。もちろんこれは19世紀に描かれた空想の世界ですが、それは現代世界では見ることのできない、冒険の舞台。

作者・倉薗紀彦さんの実直な線が産み出す、秘境の風景。現実にはありえない不思議な世界、そして感じるのは人間の小ささと虚無。「これは絶対助からんやろ…」感があってゾクゾクします。

しかしひたすら地球の中心を目指し、帰還の難しい旅を続ける一行。幾度もの危機・絶望を乗り越え、辿り着いた先にあったものは…?最終4巻はスピード感あふれる展開。迫力のある、最後の冒険が繰り広げられます。

果たしてリーデンブロック一行は、再び地上に戻ることができるのか?結末はぜひ本編でお楽しみください。

異色の冒険漫画

というわけで漫画「地底旅行」全4巻。近年の漫画界においては稀有とも言える、特異な漫画でした。通して読むと、よく完結させたなぁ、というのが正直な感想です。

しかしその内容は実に魅力的。宇宙でもない、異次元でもない、かつて人々の空想の中にあったであろう、地下世界への大冒険へ導いてくれました。まだまだ世界には冒険がある!と感じることしきり。

リーデンブロック教授の飽くなき探究心と強い意志が、読み手の心に熱い気持ちを残しててくれる。冒険心あふれた面白い漫画です。

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