フランスの老舗高級レストランで働く、気弱なそうな料理人。下働きばかりの彼には、ある秘密が―?
さもえど太郎さんの漫画『Artiste(アルティスト)』。料理人として徐々に自身の世界を広げていく青年の成長と、パリに暮らすアーティスト達の群像劇が描かれます。
連載は新潮社の「月刊コミックバンチ」およびコミックバンチweb。2021年6月現在、単行本は7巻まで刊行、以下続刊です。
ところで作者のさもえど太郎さん。変わったペンネームですが、「さもえど」はロシア原産のモフモフなワンちゃん「サモエド」から来ているそうな。
『Artiste(アルティスト)』感想・レビュー
『Artiste(アルティスト)』あらすじ・概要
漫画『Artiste(アルティスト)』の主人公は、優秀だが気弱な若き料理人・ジルベール。
厳しいシェフに目をつけられ、下働きばかりの毎日。しかし陽気な新人・マルコとの交流をきっかけに、周囲に料理の腕を認められ、その世界を広げていくように。
そして1巻後半で「一芸入居」のアパートに引っ越すジルベール。そこに集うアーティストや同僚の料理人たちにスポットを当てた話も、並行して展開。
「ジルベールの成長譚+パリに生きるアーティストたちの群像劇」が、『Artiste(アルティスト)』全体で紡がれていきます。
ジルベールが気弱な理由は…
主人公・ジルベールは終始オドオドした態度で、自己主張がとても!苦手。その理由は「鋭い嗅覚」。
料理人として匂い・香りに気付くことは良いことなんじゃないの?と思われるかもしれません。が、彼の場合は嗅覚が「鋭すぎること」が災いの種に。
鼻が利きすぎて、無意識に他人の秘密にも気づいてしまうジルベール。それが原因のトラブルが積み重なり、引っ込み思案な性格が形成されていくことに。ちょっとかわいそう…。
仲間との出会いと成長
しかしその嗅覚は「味覚の再現」には大きな力を発揮。それがやり手の元シェフ・メグレ―の目に止まり、新店舗でソーシエ(※)兼・副料理長を任されることに。
※ソース部門のシェフ。料理の味を決定づける厨房の花形。
メグレーに自分の味を再現することを期待され、現場の責任者として多くの料理人を束ねる立場となったジルベール。さあ、活躍の時だ!
…と思いきや、新店舗に集った料理人たちはコミュニケーションの取りづらい、一癖も二癖もある人物ばかり。他人との接触が不得手なジルベールがアワアワするのは、言うまでもなし(笑)。
が、ソーシエとなったジルベールは一味違う!ゆっくりだけど、徐々にレストランの人間関係を構築。ピンチを乗り越えて成長していきます。
その一つの集大成とも言えるエピソードが、3巻終盤で描かれる「オマール海老全滅事件」。オープンイベント用の食材に致命的なトラブルが発生!さてジルベールは、仲間たちと協力してどう乗り越えていくのか?
プライドを持って働くフレンチ職人たち、そして逞しい表情を見せるジルベールの姿が、グッと胸に迫ってくる!
アーティストたちの群像劇
そんなジルベールのストーリーと並行して語られる、『Artiste(アルティスト)』のもう一つの見どころが、パリに生きるアーティストたちの群像劇。
「一芸入居」のアパートに集う市井の芸術家たちは、それぞれが矜持を持って生きる存在。
裕福ではないけれど、決して下を向かずに、己が道を進む彼らの姿を見ていると、ほんの少し勇気が湧いてくるような。
っていうか、ズケズケと言いたいことを言う自己主張の強さが、実にヨーロッパっぽくて良い(笑)。「日本人の強気」とはまた異なる、生来の気高さっぽいものに、不思議な感覚が。
そんなパリっ子の群像劇、ジルベールの成長譚、それぞれに面白みのある『Artiste(アルティスト)』。特にキャラクターや個々のエピソードが、ものすごく魅力的な漫画です。遠い海の向こうで揉まれながら成長していく彼・彼女たちの物語に、ぜひ触れてみてください。
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まとめ
以上、さもえど太郎さんの漫画『Artiste(アルティスト)』の感想・レビューでした。
丁寧に、じっくりと描かれる、料理人・ジルベールの成長譚+パリに生きるアーティストたちの群像劇に、引き込まれていきます。
そしてその中でひとり!要注目の人物が。それはメグレー氏に店の営業一切を託された、「実質的な支配人」である娘・ミシェルさん。
お父さん似?の美人さんで、大学を出たてですが有能。そしてくっきりはっきりした性格で、良い意味で個性が強すぎる!女性。
エピソード10(2巻)の初登場後、ジルベールの料理を試食し、その胸ぐらを掴んで「ばっかじゃないの!?」と怒鳴りつけるのですが、そこには意外な真意が…?
出番は決して多くは無いのですが、ピンポイントで印象的な発言や活躍をするキャラクター。その活躍(?)にご注目を。
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