「Artiste(アルティスト)」―気弱な料理人の成長譚+アーティストたちの群像劇

フランスの老舗高級レストランで働く、気弱なそうな料理人。下働きばかりの彼には、ある秘密が―?

さもえど太郎さんの漫画「Artiste(アルティスト)」。料理人として徐々に自身の世界を広げていく青年の成長と、パリに暮らすアーティスト達の群像劇が描かれます。

連載は新潮社の「月刊コミックバンチ」およびコミックバンチweb。2020年6月現在、単行本は6巻まで刊行、以下続刊です。

ところで作者のさもえど太郎さん。変わったペンネームですが、「さもえど」はロシア原産のモフモフなワンちゃん「サモエド」から来ているそうな。

この記事は読むのに4分もかかりません。

「Artiste(アルティスト)」感想

あらすじ・概要

パリのレストラン、厨房で雑用係として働く気弱な青年・ジルベールは、厳しいシェフに目をつけられ皿洗いばかりの毎日。

その後輩となった陽気な新人・マルコはジルベールと接するうち、彼が「本当は料理が出来る人間」であることに気づく。

そしてとある日の深夜。忘れ物を取りに店へ戻ったジルベールは、一人厨房に立つシェフとばったり遭遇。慌てて立ち去ろうとするジルベールの手を、なぜかシェフは掴み―

…以上が「Artiste」の1巻序盤~中盤まで。気弱な料理人ジルベールがマルコや仲間に助けられ、やがてその世界を広げていく様が描かれます。

さらに1巻後半では、「一芸入居」の方針のもとアーティストたちに部屋を貸すアパートに引っ越したジルベール。

そこを軸に、同僚の料理人やアパートのアーティストたちにスポットを当てた話が展開。「ジルベール中心のメインストーリーアーティストたちの群像劇」といった体で「Artiste(アルティスト)」の物語が描かれていきます。

ジルベールが気弱な理由は…

「Artiste(アルティスト)」の主人公・ジルベール。終始オドオドした態度で、自己主張が苦手。その原因は、「鋭い嗅覚」を持っているせい。

料理人として匂い・香りに気付くことは良いことなんじゃないの?と思われるかもしれません。が、彼の場合はその「鋭すぎる嗅覚」が災いの種

鼻が利きすぎるがゆえに、無意識に他人の秘密にも気づいてしまい、起こったトラブルは数知れず。それが引っ込み思案な性格の一因に。

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新店舗で仲間と一悶着…?

しかしその嗅覚は「味覚の再現」には大きな力を発揮。それがやり手の元シェフ・メグレ―の目に止まり、新店舗でソーシエ(※)兼・副料理長を任されることに。

※「ソーシエ」はソース部門のシェフ。料理の味を決定づける厨房の花形。

副料理長として、いきなり多くの料理人を束ねる立場となったジルベール。しかも新店舗に集った料理人たちは一癖も二癖もある人物ばかり

他人との接触が不得手なジルベールがアワアワするのは、言うまでもないでしょう(笑)。

そんな彼が周りを見わたし気づきを得て、時に人の手を借り、ゆっくりだけど徐々にレストランの人間関係を構築。ピンチを乗り越えていく様が、「Artiste」の大きな見どころ。

フレンチの職人としてプライドを持って働く人々の描写も、緊張感があって面白い。読み応えがあります。

アーティストたちの群像劇

ジルベールのストーリーと並行して語られるもう一つの見どころが、パリに生きるアーティストたちの群像劇

ジルベールの住むアパートに集う、絵画や音楽などを生業にして生きる人々。市井の芸術家として生きる彼・彼女らは決して裕福ではないけれど、それぞれが矜持とプライドを持って生きる存在

決して下を向かずに、真っ直ぐ前を見据えて己が道を進む彼らの姿を見ていると、ほんの少し勇気が湧いてくるような。

っていうか、ズケズケと言いたいことを言う自己主張の強さが、実にヨーロッパっぽくて良い(笑)。「日本人の強気」とはまた異なる、生来の気高さっぽいものが感じられて、不思議な感覚を受けます。

また芸術家だけではなく、職人として働く料理人たちの姿も、興味深いもの。自信の無いジルベールが、彼らの姿を見て学び、成長していく様に、頼もしさを感じます。

物語全体に軸が欲しい

ジルベールの成長譚も、パリっ子の群像劇も、それぞれ面白みのある物語。

ただ既刊(6巻まで)を通して読むと、「Artiste」全体としては構成がやや散漫な印象で、2点ほど気になるところが。

一つは、ジルベールのミッションが定かでは無いこと。

彼は物語の中で何を目指して生きるのか?一流のシェフになるのか、自分の店を持ちたいのか、オリジナルのレシピを完成させたいのか、はたまた?

一話以前に働いていたレストランのシェフとの確執(?)や、家族に関する隠された問題など、ジルベール個人への興味は尽きないのですが、彼自身が描く夢・目標を軸として、それにもっともっと乗っかってみたい。

もう一つ気になる点は、メインストーリーと群像劇のバランス

ジルベール以外の話も丁寧に描かれていて面白いのですが、メインとの比率を考えるとやや多いのではないか。

特に4巻以降はその傾向が顕著に。日本人漫画家の話とか、ちょっと長い(面白い内容ではあるのだけれど)。

「Artiste」のメインはやはりジルベールのストーリー。彼の成長の様子や、店が育っていく様子を、もっともっと読みたいところです。

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まとめ

以上、さもえど太郎さんの漫画「Artiste(アルティスト)」の感想でした。

キャラクターや個々の話は、ものすごく魅力的な作品。そこにぶっといストーリーの軸を作って物語全体をまとめ上げると、より没入感が生まれるのでは(※個人の感想です)。今後に期待。

ところで個人的な希望なのですが、メグレー氏の娘・ミシェルさんの出番をもっと増やしていただけませんかね。彼女のキャラクターが、めちゃくちゃ好きなんです。

2巻の初登場シーンや、ジルベールの胸ぐらを掴んで「ばっかじゃないの!?」と睨みつけるコマは、最高の一言。本作を読まれることがあれば、彼女の存在に注目してみてください。

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