いつの時代にも、過酷な闘いに挑む戦士たちがいる―。
異なる時代を生きる、三人の戦士たちを描いた短編集。山本亜季さん描く全1巻完結漫画「HUMANITAS ヒューマニタス」です。
刀を構える少年。その鋭い瞳には何が映っているのか―。
概要
「HUMANITAS ヒューマニタス」は全7話構成。それぞれ独立した、3つの話に分かれています。
オセロット(第1・2話)
15世紀の中央アメリカ。掟によって別々に育てられた双生児は、13度目の冬に戦うことを運命づけられた存在。生き残りのみが、正式に部族の一員として迎えられる。
しかし双子の片割れであるオセロットは、生まれつき視力が弱い。彼に剣を教える戦士・ネスロはその身を案じるが…。
ユーリ・シルバーマン(第3・4話)
20世紀、まだソビエト連邦共和国が存在していた冷戦時代。ユーリ・シルバーマンは反体制運動容疑により、不当に収容所に収監される。
収容所内でチェスの能力を開花させ、アメリカと戦う「冷戦の戦士」として解放されるユーリ。行方不明となった妻子を探しながら英雄となり、世界大会でアメリカ代表との勝負に挑む―。
エナ(第5~7話)
嵐に遭い転覆した、リヴァプールに戻る途中の貿易船。そこで遭難したウィリアムは、極寒の地で現住民の少女・エナに命を助けられる。
鯨を貴重な栄養源として狩る彼らと、生活を共にするウィリアム。彼はやがてエナにひかれていくが―。
「HUMANITAS ヒューマニタス」感想・レビュー
迫力ある「戦士」たちの闘い
「HUMANITAS ヒューマニタス」の作者である山本亜季さん。これがデビュー作?とは思えないぐらいのストーリー・画力。レベルが高く、読み応えがあります。
以前雑誌用に描かせてもらったヒューマニタス紹介漫画をこちらにも載せます。1巻に3つのお話が入っています。双子とかイヌイットとかイデオロギー萌えとか人類史的なものにピンときたら是非。https://t.co/0PxzwgE8Nn pic.twitter.com/B7v3bRpwCQ
— 山本亜季「賢者の学び舎」全5巻発売中 (@_aki_0623) March 18, 2017
こちらは山本亜季さんご本人による紹介漫画Tweet。本作は「いろんな国のいろんな戦士たちを描いたまんが」とのこと。なるほど、三作の主人公達は時代も立場も異なれど、みな「戦士」。
剣を持って戦うのはオセロットのみですが、ユーリは国家と、エナは自然と、それぞれの戦うべきものに立ち向かう戦士、と言えます。またオセロットも敵と戦うだけではなく、自身の運命に対しても戦いを挑む存在です。
伝わる「熱い吐息と血潮」
「HUMANITAS ヒューマニタス」の各物語で確かに描かれるのは「人間」。銘々の戦いに挑む彼らが発する、熱い吐息と血潮。コマの端々からひしひしと伝わってくる迫力があります。まさに「ヒューマニタス」。
本作では3人の戦士が登場しますが、個人的に特に好きな人物はチェスの戦士「ユーリ」。国の代表として望む最終勝負で、彼に突きつけられる残酷な選択。しかしユーリはそれまでの苦難を振り返り、そして自身の尊厳を賭けて決意します。
その時の表情!静かだけど、鳥肌が立つほどの、強い意志が伝わります。
この作品はフィクションですが、歴史の中で苦難と、そして自らとの戦いに臨んだ人間が、確かにいたのだ。そんな風に思わざるを得ない、燃え上がるような気持ちを読者の心に残してくれます。
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まとめ
以上、短編漫画集「HUMANITAS ヒューマニタス」のレビューでした。それにしても作者の山本亜希さん、ストーリー構成が実に巧み。
読んでいると三作品とも、「あー、この先はこんな感じになるんじゃないかな」という道筋が、何となく見えてくるんですね。
しかし!そんな浅はかな予想を軽く裏切る展開。そして読者を更なる高みへと誘う結末。三作品とも満足の読後感でした。山本亜季さん、期待の漫画家さんです。
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