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漫画『制服ぬすまれた』感想―かつてない「衿沢世衣子」が味わえる読み切り漫画集

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英題「My uniform was stolen.」がそのまんまの素朴な感じでなんとなくツボにはまる、衿沢世衣子さんの「制服ぬすまれた」。5編を収録したよみきり集です。

衿沢世衣子さんの漫画と言えば、さわやかな風の吹くような、独特の清涼感があります。が、この「制服ぬすまれた」はちょっと違う雰囲気で…?

概要

よみきり集「制服ぬすまれた」は、以下の漫画を収録。

  • 制服ぬすまれた
  • ワニ蕎麦
  • カラスが鳴くから
  • 鉄とマヨ
  • ハンドスピナーさとる

表題作「制服ぬすまれた」は講談社モーニング誌に掲載。それ以外は小学館「月刊flowers」「増刊flowers」にて発表された作品。発表年度は2015年~2018年です。

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各話あらすじと感想・レビュー

収録各話の、簡単なあらすじと感想を。

制服ぬすまれた

「制服を盗まれた」と、公園で泣いている女子高生。たまたま居合わせた育休中の女性警察官は、彼女の話に耳を傾ける。その姿に、自身も制服を盗まれたかつての記憶がよみがえり―。

表題作。カバー絵のポップな感じの女の子が被害者。ということで衿沢世衣子漫画らしい、ライトでコミカルな展開になるかと思いきや、意外にシリアスな展開。いい意味で予想を裏切られました。

作中、ほとんど笑顔を見せない女性警察官の表情がとても印象的。要所要所で描かれる彼女の表情と胸の内。そしてたどりつく真実とは。味わい深い一作。

短編「制服ぬすまれた」は、作者・衿沢世衣子さんのTwitterで無料公開されています。試し読みをしてみたいという方は、上記よりどうぞ。

※個人的には、ラストまで読まずに単行本で楽しむのをオススメしたい。

ワニ蕎麦

毎日、蕎麦の出前を頼む元・会社員男性と、出前のおばちゃん。ある日、「制服を来ている」おばちゃんを見かける男性。実は彼女は中学生だった。仲良くなった二人は、近所の迷惑男にあるいたずらを…。

読み終わって、その不条理さに複雑な気持ちを抱いた一作。どこに行き着くのかまったく予断を許さないドキドキを、短いページ数の中で何度も感じました。この「怖さ」は、かつての衿沢世衣子漫画では感じなかったものだなぁ。怖い。

カラスが鳴くから

組事務所の依頼でネット回線を修理する、パソコンサポートの男性。眼光鋭い若手組員の案内で、ネット環境が不調な風俗店舗へ向かう。

修理のために屋上へ上がる二人。そこに飛び交うカラスは、組員に過酷な過去を思い起こさせる―。

これはスゴイ。あらゆる意味でスゴイ。衿沢世衣子漫画なのに、登場人物の99%は男性。かつ舞台は裏社会。ページをめくる間、驚愕しどおしでした。

あとがきによると、「大人のための怖い話」特集用の一編とのことで、納得。作中に流れる冷ややかな空気は、確かに怖かった。衿沢世衣子さんの引き出し奥を覗いてしまったような短編。もっとこんな漫画を読んでみたい。

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鉄とマヨ

夏休み、進学塾に通う女子中学生。後期講習に来なくなった女の子のことが気になっている。同じくその子を探している男子と知り合い、その行方を探す。が、彼女には意外な秘密が…?

「鉄とマヨ」は、二人の主人公の名前から。「ワニ蕎麦」の女子中学生が、意外な立場で再登場。

不条理さを感じる彼女の存在ですが、その成り立ちが浮き彫りになる一編。「なんで?」を追い求めて行動する主人公少女に、思春期らしい真っ直ぐさを感じます。

ハンドスピナーさとる

スマホを壊したために落ち着かない大学生・さとる。知り合った喫茶店の美人店員(元ヤン)に、落ち着くようにとハンドスピナーを渡される。

しかしやはり落ち着かないさとるは、夜の散歩へ。そこで彼女が、山に大きな包みを埋めるのを目撃する…。

ちょっとユーモラスなタイトルに反して、意外なミステリー・サスペンス展開を見せてくれる「ハンドスピナーさとる」。

元ヤン女性の怪しい行動と連動するように、街で発覚する事件。しかし何かひっかかりを感じたさとるは、ハンドスピナーを回して心を落ち着ける。

「このっハンドスピナーが止まるまででいいから…!!」

そして真相にたどりつくさとる。そのマジメなバカさ加減に、めっちゃ笑いましたw。これはシリーズ化して欲しい。

まとめ・総評

以上、衿沢世衣子さんのよみきり作品集「制服ぬすまれた」、各話の紹介と感想・レビューでした。収録の各短編、どれを読んでも驚きの連続で、本当に面白かったです。

作者の作風と言えば、同時期発売の短編集「ベランダは難攻不落のラ・フランス」収録の「リトロリフレクター」のような、読後にさわやかな風が吹く作品多め。

ですが本単行本では、そんな既発表の衿沢世衣子漫画に対するイメージをぶち壊し、そしてこれから発表されるであろう作品に新たな期待を抱かせるような、そんな深みがあります。

作風を知っているからこそ感じる、という側面も確かにあります。が、それを差し引いても、パワーのある物語の数々。衿沢世衣子さんの新境地、そして可能性を感じさせてくれる単行本でした。満足。

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