登山漫画「山を渡る -三多摩大岳部録-」―大学登山部のリアルとコミカル

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廃部寸前の大学登山部に入部したのは、ド素人の一年女子3人?

そんな登山部の活動をリアル&コミカルに描くのが、登山漫画「山を渡る -三多摩大岳部録-」。

作者は空木哲生さんで、KADOKAWAの漫画誌ハルタ連載。2020年現在、単行本は3巻まで刊行中です。

「山を渡る -三多摩大岳部録-」感想

概要

新入生を迎え、新歓オリエンテーション真っ盛りの三多摩大学。

しかし3年男子が二人、2年女子が一人の山岳部は、廃部寸前。このままでは登山に必要な道具の数々(※高い)が使えなくなる恐れが。

その登山部に興味を持ったのは、一年生の理系女子と、同じく一年の運動未経験女子

入部にやや消極的な彼女たちを逃すまじと、先輩三人は必死の勧誘。まずは手頃な高尾山へと、二人を体験登山へ誘う。

その道中、さらに山岳文学好きな一年女子を加え、先輩+新入生の計6人はいざ、高尾山へ。先行き不安だが、果たして三多摩大学山岳部は新入生を迎えて存続できるのか?

…というストーリー。以降、山岳部のマジメな活動が、笑いをまじえて描き出されます

山を渡る -三多摩大岳部録- 1 (HARTA COMIX)空木 哲生:KADOKAWA

登山初心者の感動と成長

「山を渡る -三多摩大岳部録-」の軸は、大きく二つ。

その一つは、先輩たちに導かれ徐々に登山のおもしろさ・醍醐味に触れていく、山登り初心者である新入生女子3人の成長

運動未経験・ガチガチの理系・文学女子と、それぞれ山登りとは無縁な人生を送ってきた新入生たち、まずは標高599メートルの高尾山へチャレンジすることに。

先輩たちの必死の接待(笑)もあり、(ハイキング的な)登山を達成、登山部員(仮)となります。

続いて登山の「三種の神器」を手に入れるというミッションへ。

三種の神器とはつまり雨具とか靴とか、登山に最低限必要とされるグッズなのですが、これを彼女たちが手に入れていく過程が面白い。

貧乏大学生ゆえ、お金を出して…とはならず。登山部OBたちが残したお古を修繕することに。年季の入った道具たちに手を入れ、身につけて少しずつ馴らし、自分のものとしていく。

彼女たちが小さな感動を積み重ね、ちょっとずつ登山、の前の入り口に立っていく姿に、読み手も不思議と感じる高揚感。

先輩たちとのコミカルな掛け合いも手伝い、自身が山岳部に入部したような、不思議な感覚を覚えます。

先輩たちの迫力あるクライミング

そんな初心者の様子とは対照的なのが、「山を渡る -三多摩大岳部録-」のもう一つの軸である、本格的な登山シーン

三年生男子の金田と草場、現部長である二年生女子の黒木。登山経験者であり、より難易度の高い登山を求める彼女ら。

専門の装備に身を包み、雪山登山・ロッククライミングなど、難所を乗り越えていく様子がリアルに描かれ、思わず手に汗握ること必至。

その中でも特に注目なのは、紅一点である「女ゴリラ(※金田+草場の評)」黒木のクライミング

人が避ける難関に敢えて挑む、「冒険的登山」を標榜する彼女。自身の肉体一つを登山道具とし、全身の筋肉を使って、少しずつ高みへと登っていく、圧巻の登山アクションを見せてくれます。

静止しているはずのコマの中で、不思議と「重力」を感じるそのクライミング描写

アングルやテンポなど、作者・空木哲生さんの絶妙な描き方、独特のテンションが素晴らしい。何度コマを見ても飽きない、リアルなスポーツの醍醐味を伝えてくれます。

「山を渡る」とは?

さらに先輩と後輩、経験者と初心者、二つの軸がゆるやかに重なろうとする2巻

先輩たちに導かれ、装備の準備から基礎体力づくりを経て、本格的な山登りの道へ進まんとする後輩たちを中心に、山岳部の魅力が丁寧に綴られていきます。

先輩と後輩の距離が近くなり、活動が充実してくる。そんな部活動の楽しさ・おもしろさが、コマ・ページからひしひしと伝わってくる心地よさ。

私は登山経験はありませんが、彼女たちと一緒に山岳部をエンジョイしているような、そんな気持ちに。

学生でも社会人でも、体育会系でも文化系でも、きっと誰しもが経験したであろう、「初心者たちが物事に興味を持って、一歩ずつその階段を登っていく」描写が、本作は圧倒的に上手いんですよね。

「山を渡る -三多摩大岳部録-」を一度読めば、登山未経験でも登場人物たちと一体になれるヴァーチャル感・没入感を、きっと感じていただけるでしょう。

ところでこの漫画のタイトルは「山を渡る」。なぜ「山を登る」ではなくて「山を渡る」なのか?

その理由が2巻、山岳部の活動の中で明らかになってくるのですが、なるほど、いいセンスだなと感心。ぜひ劇中でその理由に触れてみてください。

まとめ

以上、空木哲生さんの漫画「山を渡る -三多摩大岳部録-」の感想でした。

「初心者が登山を好きになっていく様子」と「経験者による本格的なクライミング」。2つの視点から登山の魅力にアプローチする、クオリティの高い登山漫画です。

と同時に、笑いが随所に詰まった楽しい内容。登山のことを知らなくても、山に自然に興味を持ち、そして三多摩大山岳部の面々が好きにになってくる。漫画としてシンプルに楽しめる、オススメの作品です。

そして3巻ではいよいよ、初心者3人が入部してから初めての「一泊登山」へ。

そこでももまた笑いと感動が待っているのですが、それは読んでのお楽しみ。激烈に腹の空いてくる「山のご飯」にも注目。

なお作中にいくつか、実際の風景写真が掲載されているのですが、それらは全て作者・空木哲生さんによるもの

作者の日々の登山や取材内容が反映されているであろう、そんな劇中で描かれる景色・自然の数々も見どころです。

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