タイトルで『漫画版「小説版逆シャア」』とかいう、訳のわからない書き方をしてしまいましたが、そういうことです(どういうことだ)。
アニメ・ガンダムシリーズの監督・富野由悠季さんによる原作小説をコミカライズした「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン」。さびしうろあきさん・柳瀬敬之さんの共著で、全7巻完結済みです。
本記事は漫画版「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン」のレビューですが、映画版「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」等を見ている、という前提で進めます。映画版を未見の方はご注意を。
「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン」レビュー
概要
オリジナルの小説版「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン」は、映画用のシナリオ第1稿を元にしたモチーフ小説として、映画公開前に刊行されたもの。
そのため、映画本編とは下記のような設定の違いがあります。
オリジナル | ベルトーチカ・チルドレン |
ギュネイ・ガス | グラーヴ・ガス |
ヤクト・ドーガ | サイコ・ドーガ |
ナナイ・ミゲル | メスタ・メスア |
サザビー | ナイチンゲール |
νガンダム | Hi-νガンダム(劇中表記はνガンダム) |
チェーン・アギ | ベルトーチカ・イルマ |
その多くは名前やデザインの違いですが、大きく異なるのはアムロのパートナーが、チェーンではなくベルトーチカであること。
「機動戦士Zガンダム」で出会ったアムロとベルトーチカの関係を、そのまま引き継ぐ形になっています。
私も数十年前に小説版を読んだのですが、さすがに内容は忘れてしまった(笑)。なので本記事では、小説版との比較は割愛。映画は何度も見ています。
映画との違和感無し
そんな感じで読み始めた、逆シャア・ベルトーチカ・チルドレン。
さびしうろあきさん・柳瀬敬之さんの作画はあっさり目で、最初はやや淡白に感じました。ですが、読み進めると落ち着いた感じで読みやすいことに気づきます。
全体的な作りに関しても設定の違いはあれど、基本的には映画版「逆シャア」のイメージを忠実になぞっているというイメージ。
映画と較べても違和感がなく、三枝成彰さん作曲の「ドコドコドコ…」という、迫力あるBGMが聞こえてくるかのよう。

[さびしうろあき/柳瀬敬之 著 KADOKAWA/角川書店
「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン」1巻より引用]
もちろん本作はあくまでも小説版のコミカライズ。映画版とは異なるものですが、ベルトーチカやサイコ・ドーガといったオリジナルと異なる要素を、映画版のビジュアルとうまく組み合わせているという印象。
展開も突飛な感じがなく、むしろ2時間の映画でオミットされた部分の補足があったりして、「ああ、あれはそういうことだったのか」と腑に落ちることも。映画版の補完もできます。
迫力のMS戦
そしてガンダム漫画の肝であるモビル・スーツ戦も、迫力充分。後半、ν(ニュー)ガンダムが本格的に活躍する段では、ベルトーチカ・チルドレン独自の展開が。
アクシズの落下を阻止するために、オリジナルデザインのハイパー・ランチャーをラー・カイラムと連携して用いるνガンダム。映画では見られない戦闘シーンが新鮮。

[さびしうろあき/柳瀬敬之 著 KADOKAWA/角川書店
「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン」6巻より引用]
さらにHi-νガンダムやナイチンゲールの戦闘。かつて設定やイラストでしか見られなかったMSが、漫画の中で躍動している。そう考えるとグッと来るものがあります。(しかしナイチンゲールは手足の短いデザインだから、カッコよく見せるのに苦労があったのでは、と勝手に推察。)
主役機以外でも、大量に出てくるジェガンやギラ・ドーガの戦闘が小気味良い。編隊を組んでMSが宇宙空間を飛行する様子は、ガンダムならではの魅力。
注目の艦隊戦
MS戦以外にも、予想以上の迫力を持って描かれる艦隊戦に注目。戦艦が活躍するのは機動戦士ガンダムならではの魅力ですが、艦隊の動きが重要な意味を持つ「逆シャア」において、手抜きなしの艦隊戦描写は不可欠。
「なぜ、艦隊はそのような動きを取るのか?」という大局的な動きを自然に説明しつつ、説得力を持って展開される艦隊戦。白兵的な動きをするMSとは、対極的な迫力があります。

[さびしうろあき/柳瀬敬之 著 KADOKAWA/角川書店
「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン」2巻より引用]
ロンド・ベルの旗艦ラー・カイラム、ネオ・ジオンの旗艦レウルーラなど、戦艦が巨大感を持って描かれるのもポイント。さらに巨大なアクシズ含め、「宇宙空間で大きいものを大きいと感じさせる」描写が本作はとても上手く、ベルトーチカ・チルドレンならではの迫力を生み出しています。
盛り上がる終盤の展開
終盤となる6巻以降、物語はいよいよ盛り上がる展開。シャアとアムロの直接対決へ。一方、クェス、ハサウェイ、さらにベルトーチカたちも動きだします。
地球にアクシズを落とさんとするシャア。そしてそれを防ごうとするアムロ。
二人の戦いの決着は?そして映画版とは異なるヒロイン、ベルトーチカの運命やいかに!
それを受けての最終7巻では、いよいよ白熱するHi-νガンダムVSナイチンゲールのMS戦。映画におけるνガンダムVSサザビーとはまた一味違う、緊迫の戦いが展開されます。

[さびしうろあき/柳瀬敬之 著 KADOKAWA/角川書店
「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン」6巻より引用]
結末が気になるところですが、忘れてならないのは本作のタイトルが「ベルトーチカ・チルドレン」であること。
お腹にアムロの子を宿しているベルトーチカ。その事実がガンダムという物語の中で、どのような役割を果たすのか。映画とは違う、「ベルトーチカ・チルドレン」ならではのクライマックスに注目。
まとめ
以上、漫画版「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン」のレビューでした。全7巻という程よい巻数で、「逆シャア」の世界を描いたコミック版。テンポよく、迫力もあり、読み応えのあるガンダム漫画です。
映画「逆襲のシャア」では時間的な制約もあり、初見では若干わかりにくい部分(艦隊の動きなど)があります。一方本作では独自解釈も含めて、その辺りの理解が進むつくり。

[さびしうろあき/柳瀬敬之 著 KADOKAWA/角川書店
「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン」4巻より引用]
こんな感じで、巻末にかわいいオマケ解説漫画が付くこともw。
映画を見たあとにベルトーチカ・チルドレンを読むと、さらに逆シャアの世界への理解が進むのではないでしょうか。映画版の補完用としてもオススメです。
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