漫画『おろち』―不思議な美少女が導くドラマティック・ホラー

ホラー漫画家として定評のある楳図かずおさんですが、恐怖かつドラマ性あふれる物語『おろち』を読むと、その漫画に対する評価が180℃変わるのではないでしょうか。

楳図かずおさんの『おろち』全4巻(小学館ビッグコミックススペシャル版)。謎の少女”おろち”を狂言回しとして描かれるホラー・オムニバスです。

「おろち」感想・レビュー

あらすじ・概要

漫画『おろち』は、週刊少年サンデーに1969~1970年にかけて連載された作品。

ジャンルとしてはホラー・怪奇漫画に属するものですが、グロ・スプラッタよりはドラマ性に重点を置いているのが大きな特徴

  • 姉妹(1巻)
  • 骨(1巻)
  • 秀才(2巻)
  • ふるさと(2巻)
  • カギ(2巻)
  • ステージ(3巻)
  • 戦闘(3巻)
  • 眼(4巻)
  • 血(4巻)

以上全4巻に、中編程度のボリュームを持つ全9話を収録。各話に登場する人物たちに起こる悲喜こもごもが、謎の美少女”おろち”の眼を通してオムニバス的に描かれていきます

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予想外にドラマティックな「恐怖」

漫画『おろち』を読み始めると、多くの人は「あれ、思てたんと違うな…?」と感じるのでは。その原因は、各話のストーリーがドラマ性の高いものだから。

  • 18歳になると醜い容貌となる運命の姉妹、その恐怖を描く「姉妹」
  • 父をひき逃げした犯人に対する少年の復讐劇「ステージ」
  • 殺人犯に狙われた盲目の少女を焦燥「眼」

など、『おろち』に収録の各話それぞれに「恐怖」があるのですが、それらはホラー漫画としてのそれと言うよりは、人間の心理や関係性から生まれるもの。非常にドラマティックな恐怖が織り込まれています

中には、墓場から蘇った夫と、彼から逃げる妻を描く「骨」のような、ちょいグロのホラーもありますが、『おろち』全体の中では少数派。基本的にはストーリー重視の恐怖が描かれていきます。

また「戦闘」のように、社会性の強いストーリーを持つ話も

太平洋戦争時、南方の戦線で劣悪な条件から「人としての一線」を越えた日本兵たち。終戦後の平和な日本で、父がその一人だったのでは?と疑いを抱く少年と、それに向き合っていく父の姿。二人を通して「人間の生き様」が描かれていきます。

極限状態における人の行動を問うた、非常に難しいテーマなのですが、それをホラーテイストを絡めながらじわじわと紡ぎあげ、かつ読者にも「あなたはどう思う?あなただったらどうする?」と投げかけてくる楳図かずおさんの巧みさに、深みを感じます。

美少女”おろち”の存在自体が面白い

そんな物語のナビゲーターが”おろち”なのですが、彼女の存在自体が漫画『おろち』の面白さの一つ

見た目は高校生~20歳ぐらいの美少女で、至って普通の人間に見える”おろち”。実は超能力を使えたり歳を取らなかったりする、という超常的な存在(彼女が何故そうなのか、というのは不明)。

彼女は登場人物たちに起こる出来事やその人生を、基本「見届ける」的な立場ですが、ガンガン物語の中に入っていく(笑)。超能力を使って心を読んだり、家庭の中に入り込んだり。時には彼女がした行動によって、物事が悪化したりも。ええんかい。

が、終始まじめな表情を崩さない”おろち”の真剣な様子を見ているうちに、不思議と彼女の視線と同調。話の中にどっぷり浸かることに。

さて奇想天外な物語の果てに、彼女=読者は果たして何を見るのか?楳図かずおさんの演出する仄暗いドキドキ、たまらない面白さがあります。

まとめ

以上、楳図かずおさんのホラー漫画『おろち』の感想・レビューでした。

美少女”おろち”の導くドラマティックなストーリーの数々は、一度読むと忘れられないインパクト。1970年前後の作品ながら、現在の作品と遜色ない普遍的な面白さを感じます。

また楳図かずおさんの美麗な、美麗すぎる!作画・表現力も『おろち』の大きな魅力。特に最終話「血」で描かれる、絵本的な世界は必見。キャラクター・ストーリー・ビジュアルが三位一体となった物語を楽しんでみてください。

ちなみに楳図かずおさんはこんな方です。

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