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マンガ版『ゼルダの伝説』感想―石ノ森章太郎描くリンクの旅

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石ノ森章太郎(旧ペンネーム:石森章太郎)さんと言えば、手塚治虫さん・藤子不二雄さんらと並んで一時代を築いた、大御所の漫画家さん。

『サイボーグ009』『仮面ライダー』『幻魔大戦』『人造人間キカイダー』と、著名な作品を挙げれば枚挙にいとまがありません。

そんな石ノ森章太郎さんが、任天堂のゲーム『ゼルダの伝説』のコミカライズを手がけていた、って知ってました?

こちら。タイトル名もズバリ『ゼルダの伝説』。現在は『石ノ森章太郎デジタル大全』の1冊として、電子書籍版が読めます。

ズングリムックリでホビットっぽい、主人公のリンクが印象的なカバーです。

※2019年6月現在、本書籍の電子版は絶版?になっているようです。記事内のリンクは残しておきますが、ご理解の上ご覧ください。

石ノ森版『ゼルダの伝説』レビュー

概要

『ゼルダの伝説』は、ゲームハード「ファミリーコンピュータ(ファミコン)」で発売された、任天堂の大人気ゲーム

盗賊・ガノンドロフにさらわれたゼルダ姫を少年・リンクが救う、というストーリーの、アクション・ファンタジーです。

その後ファミコンの後継機種・スーパーファミコン(スーファミ)が発売され、1991年にアクションRPG『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』が発売されました。


※こちらは3DS版の「2」

本作・石ノ森章太郎版『ゼルダの伝説』は、初出が1992年1月。

登場する「司祭アグニム」「長老サハスラーラ」などの登場人物から見ても、『神々のトライフォース』をベースに漫画化したことがうかがえます。

そしてこの漫画、石ノ森作品でもちょっと変わり種の一品。なんとアメリカの雑誌「NINTENDO POWER」に連載する「ため」に描かれた作品なんです。

ページのめくり方が、日本のコミックとは逆であるのが特徴的。

日本発売版はセリフが全て日本語に置き換わっていますが、絵で描かれた擬音語なども全てアルファベット

なお元々はフルカラーだったそうですが、この『石ノ森章太郎デジタル大全』では、モノクロでの収録となっています。

独特の雰囲気を持つゼル伝

さて実際に石ノ森章太郎タッチの『ゼルダの伝説』を読んでみると…

キャラクターは石ノ森テイストそのまま、しかし世界観やモンスターなどは完全にゼル伝で、なんだか不思議な感じがします。

ですがそれらが意外にマッチ。多くのアニメ原作を手がけられている石ノ森先生なので、その作風がファンタジーゲームとも親和性が高いのかもしれません。

物語の展開は、わりと駆け足。ゲームではボス的なモンスターとの戦いも、トントン拍子で進みます。

しかしそこは匠の技。ゲームのボリュームを詰め込みつつも、程よい加減で消化しているのが流石。

海外向けの作りが新鮮

石ノ森版『ゼルダの伝説』の特徴は、なんといっても海外向け仕様の漫画である、ということ。

ページめくりが日本と逆であることに加え、擬音語・擬態語が全て英語で描かれており、実に新鮮。

日本語だったら「ズバーン!」とか「プシューッ」のような表記になるところが、「BASHOOOM!」「SHHHOOOP…」になっている。

私はあまりアメコミ文化に馴染みがないのですが、読んでいるとこれがなかなか面白い

なおかつ、これを石ノ森章太郎氏が描いていると思うと、さらにおもしろさも倍、です。

オリジナルキャラクターも登場

そして物語後半では、リンクの味方になる「ローム」という人物が登場します。

これはスーファミ版では見かけなかったので、オリジナルキャラクターのようですが、あれ、どこかで見たことが…?

これは石ノ森ファンならばニヤリとする人物ですね。そう、『サイボーグ009』の「002」こと「ジェット」です。これは本作ならではのお楽しみ。

そんなロームも混じえての『ゼルダの伝説』。リンクの冒険のラストも、ゲームとはまた違う余韻のある終わり方。

200ページ近いボリュームで読み応えもあり、いろいろな意味で楽しめる作品でした。

まとめ:色んな意味で貴重な一冊

以上、石ノ森章太郎版『ゼルダの伝説』の感想・レビューでした。

大御所の描かれたゲームのコミカライズ、しかも逆輸入漫画。

巻末には石ノ森章太郎氏による『連載を終えてのちょっとひとこと』というコラムも掲載され、なかなか貴重な一冊です。

しかし人気ゲームとして確立された『ゼルダの伝説』を、自身のテイストはそのままにコミカライズする、石ノ森先生の手腕はスゴイ

石ノ森ファンもゼル伝ファンも、きっと不思議な感覚に陥るであろう、ユニークな世界観を体験してみてください。

石ノ森章太郎さんの既刊はこちら
Kindle / ブックライブ

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