「インハンド 紐倉博士とまじめな右腕」―天才変人科学者の活躍を描くサイエンス・サスペンス

医療ミステリー・サスペンス漫画なら、朱戸アオを抜きにしては語れない。

「ネメシスの杖」「Final Phase」などでリアルな医療サスペンスの世界を見せてくれる、朱戸アオさんの「インハンド 紐倉博士とまじめな右腕」。

超天才にして超変人、右腕の筋電義手が特徴的な寄生虫研究者・紐倉博士の活躍を描く、全3話。その続編がイブニング誌にて復活!

中編的なボリュームながら各話、バツグンのおもしろさを持つ漫画「インハンド 紐倉博士とまじめな右腕」。続編のニュースにワクワクが止まりません。ぜひ連載でそのおもしろさを感じて欲しいのですが、前作を未読の方のために「インハンド 紐倉博士とまじめな右腕」のレビューを。

インハンド 紐倉博士とまじめな右腕 (アフタヌーンコミックス)朱戸アオ:講談社

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「インハンド」概要

寄生虫研究者である紐倉博士。もともとは、全1巻完結の医療サスペンス「ネメシスの杖」に登場した人物。

ネメシスの杖(1) (アフタヌーンコミックス)朱戸アオ:講談社

寄生虫の感染症事件を調査する主人公・阿里玲に協力する、もう一人の主人公として活躍します。


[朱戸アオ 著 講談社「ネメシスの杖」より引用]

寄生虫大好きな専門家であり、研究成果や数々の投資により大金持ち。天才だが人嫌いの変人、という人物。右腕は筋電義手ですが、その経緯はいまだ明かされていません。

「インハンド 紐倉博士とまじめな右腕」は、その紐倉を主人公とした医療ミステリー・サスペンス。紐倉と元医療関係者の高家がコンビを組み、内調(内閣情報調査室)健康危機管理部門に所属の女性・牧野の依頼で、医療に関わる様々な謎に挑む、というバディものです。

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収録話紹介

「インハンド 紐倉博士とまじめな右腕」収録の全3話について、簡単にご紹介。

ディオニソスの冠

TARSコロナウイルスと思われる病原菌により急死した女性。その従兄弟である高家は、その感染源を調査する内調の牧野と寄生虫研究者・紐倉に出会う。

近々に海外渡航歴のない女性は、なぜTARSに感染したのか?紐倉と高家は協力し、TARSを日本に持ち込んだ「患者ゼロ」を探す―。

朱戸アオ「インハンド 紐倉博士とまじめな右腕」
[朱戸アオ 著 講談社「インハンド 紐倉博士とまじめな右腕」より引用]

紐倉と高家がコンビを組むまでを描く第一話。謎の感染源を探す、というミステリー感がたまらない一作。

ガニュメデスの杯

人体売買のルートを追っていた警察官が行方不明に。防犯カメラの写真には、不老不死を目指す財団の職員が写る。

牧野に依頼され、財団の調査を行う紐倉と高家。支部長である女性を目にするが、年齢に見合わぬその若さが気になり…。

朱戸アオ「インハンド 紐倉博士とまじめな右腕」
[朱戸アオ 著 講談社「インハンド 紐倉博士とまじめな右腕」より引用]

「不老不死」という永遠にして欲深きテーマと、それが引き起こす犯罪を描くサスペンス。コンビらしくなってきた紐倉と高家、二人の少し変わった友情?も。

モイラの島

不正な遺伝子調査をしたと思しき会社役員が自殺した。彼の会社の業務に、出資という形で加わっていた紐倉。独自に内部を調査する。

その過程で、役員の父でもある会長に遭遇。豪腕だが一族に流れる「鬼の血」を気にする彼は、やがて息子の死の真実に触れる。

朱戸アオ「インハンド 紐倉博士とまじめな右腕」
[朱戸アオ 著 講談社「インハンド 紐倉博士とまじめな右腕」より引用]

人格の形成に遺伝子がどのように関わっているか、というのは誰しも気になるもの。しかし我々の持つ「常識」は、果たして正しいのか?短編の枠を超えた、ドラマティックなストーリー。

見どころ

以上が全3話の主な内容。どの話も濃密な読み応えがあります。

物語のベースとなるのは、紐倉博士のユニークなキャラクター性。天才で金持ち、その態度は傲岸不遜そのもの。ですが理知的なカッコよさを併せ持ち、とても魅力的。

朱戸アオ「インハンド 紐倉博士とまじめな右腕」
[朱戸アオ 著 講談社「インハンド 紐倉博士とまじめな右腕」より引用]

一方、相棒となる高家は、紐倉と反比例するかのような実直な人間。ですが傲慢な紐倉に対し物怖じせず、ズケズケと言い合える関係を構築。正反対な二人が相棒となり、協力しあっていく。バディものの魅力があります。

ま、ぶっちゃけ紐倉博士って、すごく「イヤなヤツ」なんですけど(笑)。天才ゆえにイヤなヤツを突き抜けた感があって、逆にそこが魅力だったり。

また各話のテーマになっているリアルな医療・科学知識が、読み手の知識欲を刺激。専門的な分野を取り扱いながらも、決してマニアックになりすぎない絶妙なライン。エンターテインメントの領域からはみ出ないバランス感覚は、流石の朱戸アオ漫画。

医療・科学知識と謎要素ががっちり噛み合い、それが組み込まれたストーリーは充実の読み応え。各話とも中編的な長さながら、にじみ出るサスペンス感に満足の読後感です。

そしてどのストーリーからも感じるのは「生命の神秘」。感染、不老不死、遺伝…。我々はどこから来て、どこへ行くのか。そんなことにちょっと思いを馳せてみたくなるような、不思議な気持ちになります。

まとめ

以上、朱戸アオさん描くミステリー・サスペンス「インハンド 紐倉博士とまじめな右腕」のレビューでした。

「ユニークなキャラクター性」「リアリティのある医学・科学知識」「ドキドキ感あふれるサスペンス要素」が練り込まれたサイエンス・ミステリー。続編を読む前に楽しんでいただきたい一冊です。

なお「インハンド 紐倉博士とまじめな右腕」は、「ネメシスの杖」を未読でも全く問題ありません。が、「ネメシスの杖」も全1巻で読みやすく、オススメの医療サスペンス漫画。「インハンド」の前でも後でも、ぜひチェックを。

さて気になるのは、「インハンド 紐倉博士とまじめな右腕」でも「ネメシスの杖」でも描かれなかったこと。

  • 紐倉博士はなぜ義手になったのか?
  • 内調の牧野は紐倉に何の貸しがあるのか?

これらが続編「インハンド」で明らかになるのか、注目。連載、そして単行本化が楽しみです。

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