漫画「インハンド」―天才変人科学者の活躍を描くサイエンス・サスペンス

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医療ミステリー・サスペンス漫画なら、朱戸アオ作品を抜きにしては語れない!

「Final Phase」「リウーを待ちながら」などで、リアルな医療サスペンスの世界を見せてくれる漫画家・朱戸アオさん

その系譜に連なる漫画「インハンド」、2019年4月にTVドラマ化された同名作品の原作です。

実写ドラマ化にあわせて、既刊である「ネメシスの杖」「インハンド 紐倉博士とまじめな右腕」が、それぞれ「インハンド プロローグ 1巻 ネメシスの杖」「インハンド プロローグ 2巻 ガニュメデスの杯、他」として再刊行されました。

またそのプロローグを受けた新シリーズが、無印「インハンド」として新たに刊行されています。

「インハンド」感想

「インハンド」概要

漫画「インハンド」の主人公は、寄生虫研究者である紐倉博士

もともとは、全1巻完結の医療サスペンス「ネメシスの杖」(現「インハンド プロローグ 1巻 ネメシスの杖」)に登場した人物。

研究成果や数々の投資により大金持ち、天才だが人嫌いの変人である紐倉。そしてその右腕には、筋電義手を装着

ですが彼が右腕を失った経緯は劇中でいまだ明かされておらず、そこには謎が…という、ちょっとミステリアスな部分も持つキャラクターです。

インハンド プロローグ(1) ネメシスの杖 (イブニングコミックス)朱戸アオ:講談社

彼が初登場した「ネメシスの杖」では、寄生虫の感染症事件を調査する主人公・阿里玲に協力する、もう一人の主人公として活躍。

インハンド プロローグ(2) ガニュメデスの杯、他 (イブニングコミックス)朱戸アオ:講談社

「ネメシスの杖」の後に描かれた「インハンド 紐倉博士とまじめな右腕」(現「インハンド プロローグ 2巻 ガニュメデスの杯、他」)では、紐倉が主人公に。1話を経て助手となる元医療関係者・高家とコンビを組みます。

彼らが内調(内閣情報調査室)健康危機管理部門に所属の女性・牧野の依頼で、医療に絡んだ難事件・謎に挑む、というのが物語の基本線。

続編である新シリーズでも、紐倉・高家コンビを中心にサイエンス・ミステリーが描かれていきます。

傲岸不遜な天才博士

紐倉・高家コンビが確立される「インハンド プロローグ 2巻」。物語を引っ張るのは、紐倉博士のユニークなキャラクター性

天才で金持ち、その態度は傲岸不遜そのもの。ですが理知的なカッコよさを併せ持つという主人公。

一方、相棒となる高家は、紐倉と反比例するかのような実直な人間。ですが傲慢な紐倉に対し物怖じせず、ズケズケと言い合える関係を構築。

そんな正反対な二人が協力関係を築き、バディとして謎要素に相対していきます。

ま、ぶっちゃけ紐倉博士って、一般人から見たらすごく「イヤなヤツ」なんですけど(笑)。

でも天才ゆえ、常人とは異なる視点から物事を見ていて、その姿勢に意外と共感できたり。イヤなヤツを突き抜けて、不思議と魅力のある人物です。

「プロローグ 2巻」の見どころ

そんな彼らが本格的に始動する「プロローグ 2巻」には、「ディオニソスの冠」「ガニュメデスの杯」「モイラの島」の全3話を収録。

各話のテーマになっているリアルな医療・科学知識が物語の肝ですが、専門的な分野を取り扱いながらも、決してマニアックになりすぎない絶妙さは、朱戸アオさんのウマイところ。

エンターテインメントの領域からはみ出ないバランス感覚で、読み手の知識欲を刺激してきます。

医療・科学知識と謎要素ががっちり噛み合い、それが組み込まれたストーリーは充実の読み応え。各話とも中編的な長さながら、にじみ出るサスペンス感に満足の読後感です。

そしてどのストーリーからも感じるのは「生命の神秘」

感染、不老不死、遺伝…。我々はどこから来て、どこへ行くのか。

そんなことにちょっと思いを馳せてみたくなるような、不思議な気持ちになります。

新シリーズでは…

そして新シリーズに突入した「インハンド」。

1巻では前作のタイトルを踏襲した「ペルセポネの痘」「キマイラの血(2巻に続く)」を収録しているのですが…。

うん、面白い!そして、これは朱戸アオさんにしか描けない漫画だ!ということを再認識。

豊富な科学知識をふんだんに練り込んだストーリーと、サスペンスフルな展開に、グッと引き込まれます。

「ペルセポネの痘」では、話のキーに「天然痘」(※正確にはオルフウイルス)を持ってきたのがユニーク。

すでに地上から姿を消したウィルスですが、紐倉によると世界で2箇所、保管場所があるとか。しかも理論上は人工合成も可能とのこと。

怖いけど、そういう面白い知識を知れるのも「インハンド」の魅力。

さらにそれをミステリー展開に組み込み、また社会問題(今回はとある野生動物の話)とも絡めて描くのが、朱戸アオ漫画の真骨頂。

ただエンタメを読んだ、というだけではない。読み終わったあとに、自分が生きている世界をちょっと俯瞰してみたくなるような、不思議なスケールを感じます。

義手の謎。そして新たな登場人物が

そんな新「インハンド」。前シリーズと読み比べて気づくのは、紐倉と高家のコンビ感が、より高まっていること。

ナチュラルに憎まれ口を叩き合いながらも、根っこで信頼関係を築いている様子が窺えます。

また気になる紐倉の筋電義手の謎。

なぜ紐倉が右手を失ったか、についてはこれまで明らかになっていませんでしたが、第一話冒頭で紐倉がビルの屋上で右腕を引きちぎられるシーンが。

これはあくまでも紐倉の回想イメージなのですが、紐倉の右手を握ったその人物の口からは、「君の幸運の右腕を(もらっていくよ)」という気になるセリフが。

その他にも紐倉の経歴に関わる描写が練り込まれ、彼の過去が明らかになっていきそう。

さらに「ペルセポネの痘」の最終話では、朱戸アオさんの過去作からあの人物が登場!

ネタバレになるので深くは触れませんが、これがまた意外な形・意外な役割。おそらくレギュラーとなるのでしょう。その活躍が楽しみです。

まとめ

以上、朱戸アオさん描くミステリー・サスペンス漫画「インハンド」の感想でした。

「ユニークなキャラクター性」「リアリティのある医学・科学知識」「ドキドキ感あふれるサスペンス要素」が練り込まれたサイエンス・ミステリー。

個人的に「インハンド プロローグ」がめちゃくちゃ好きなのですが、続編「インハンド」もそれに劣らぬ面白さ。今後展開されるであろうエピソードにも期待です。

さて気になるのは、「インハンド プロローグ」でも「インハンド」1巻でも描かれなかったこと。

  • 紐倉博士はなぜ義手になったのか?
  • 内調の牧野は紐倉に何の貸しがあるのか?

これらが連載中の「インハンド」で明らかになるのか、注目。

なお朱戸アオさんの過去作「リウーを待ちながら」全3巻も読んでおくと、より幸せな読後感が得られるでしょう。

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