不良グループに目をつけられた少年は、風変わりな空手の達人に出会い、その人生を大きく変えてゆく―!
長尾謙一郎さんの『三日月のドラゴン』。海辺の町を舞台に、空手の世界に足を踏み入れた純朴な少年の成長を描く、熱い!青春格闘技ストーリーです。
連載は小学館「月刊スピリッツ」で、全7巻完結。以下、『三日月のドラゴン』の主なあらすじや見どころなどをご紹介します。
『三日月のドラゴン』あらすじ
幼い頃に両親を亡くし、祖母と二人暮らしの高校一年生・月島龍之介。ある日の帰り道、友人にからむ別の高校の不良グループに因縁をつけられ、金銭を要求される。
祖母に負担はかけられない、と悩む龍之介。悪いことは重なり、コンビニのバイト中に強盗に遭遇、刃物で脅されてしまう。
そのピンチを救ったのは、たまたま来店した酔っぱらいの老人。不思議な体術で強盗を華麗に撃退!その姿に感銘を受けた龍之介は、弟子入りを志願するが…?
『三日月のドラゴン』レビュー
王道「過ぎる」ストーリーが面白い!
あらすじで大体お分かりの通り、
- 気弱な真面目少年が
- 不良グループに目を付けられ
- 武道の達人に出会い特訓、逆襲へ
というのが基本ストーリー。実にベタ!な王道展開です。
ですがこの「ベタさ」こそが、『三日月のドラゴン』の面白さの源。
力の無さを嘆く主人公。理不尽な要求をいともたやすく行う不良グループ。風変わりだが恐ろしく強い空手師範…。
くっきりはっきりした各キャラクターの特徴と分かりやすい構造、さらにテンポの良い物語運びで、どんどんその世界観に没入していきます。
その中でも特に印象的なのは、不良グループの非道な行動。こいつら、めっちゃ腹立つわ!怒りでページをめくる手が震える…!(笑)
風変わりな空手師範の弟子に
そんな王道ストーリーの中心となる龍之介。祖母とのつつましい生活を、アルバイトで支える健気な少年。
しかし不良グループに金銭的な脅迫を受け、それはやがて祖母の間近にも…。
大切な人を守るために強くなりたい!の一心で空手の道へ。
その師となるのが、格闘技とは縁遠い風貌の老人・西田凡拙(ぼんせつ)。
本業はお寺の住職でとても強そうには見えないのですが、コンビニ強盗を酔っ払いながら瞬殺するほどの、空手の達人。
凡拙は空手師範の息子・愚太郎(ぐうたろう)と、孫娘・菊代とともに、道場で子どもたちに空手を教えているのですが、龍之介への指導の仕方は独特で…?
龍之介の成長を支える、この空手道場の人々のキャラクターが強烈で面白い!『三日月のドラゴン』の大きな魅力の一つです。
不良グループを倒せるのか…?
しかし龍之介の成長を待たずに辛辣さを増す、不良グループの嫌がらせ。
心に広がる無力感に苛まれ、夜中にも関わらず道場へ向かう龍之介。そこで彼の苦しい現状を聞いた凡拙は、非暴力を説くのかと思いきや…
「そんな理不尽な輩どもはブチのめしたら良~~~い!!!」(なんちゅう坊さんだ…w)
かくして戦いを決意した龍之介は、凡拙・愚太郎とともに山籠りへ。そこで流派に伝わる「奥義」を習得するべく特訓を重ねる!
が、その間にも不良グループの魔の手は龍之介の身近に。果たして事態を打開できるのか…?
主人公の真っ直ぐさが心を打つ
…という感じで、気弱な少年と不良グループの対決へ、徐々に突き進んでいく『三日月のドラゴン』。特に3~4巻で熱い!盛り上がりを見せます。
これがめっぽう面白いのですが、しかし本作で読み手の心をジワジワと揺さぶるのは、その盛り上がりだけではない。
読みすすめる毎に心に深く刻まれていくのは、龍之介の「真っ直ぐな心」。
己の弱さを認め、自分の不甲斐なさを嘆き、だがそれに挫けることなく、祖母や友人を守るために強くなろうとする龍之介。
師の教えを真っ直ぐに受け止め、心身ともに成長していくその姿が、読み手の心を熱く揺さぶる…!純粋なその生き様から、目が離せなくなっていきます。
最終2巻の新展開~完結へ
そんな不良グループとの戦いも、5巻まででとりあえずケリがつきます。6巻からは平穏な日常を取り戻した龍之介たちの、ちょっと甘酸っぱい青春ストーリーが…
と思いきや、ここからまさかの新展開!不良グループよりもさらに凶悪な「ワル」が出現!龍之介の新たな戦いが始まる!
…なのですが、正直に書くと最終2巻は1~5巻の丁寧さと比べると、ちょっと急展開過ぎるかな~という気も。
ラストまでの流れはテンポの良さがある反面、もう少しじっくり(せめてあと1巻分ぐらい)物語を味わいたかったところ。とにもかくにも『三日月のドラゴン』、全7巻完結となりました。
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レビューまとめ
以上、長尾謙一郎さんの『三日月のドラゴン』レビューでした。
びっくりするほどベタな王道ストーリーながら、その芯に通っている「真っ直ぐな心」がジワジワと胸を打つ、青春格闘技漫画です。
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